【文スト】噂の野良猫娘 ２

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「火事の調査？ そんなのはそっちがやってよ。僕が出向く事件じゃない！」



きっぱりと名探偵が云って、椅子を回転させて背中を向けてしまった。

名探偵の態度に、特に怒る様子も無く刑事さんが続けた。



「報道陣にはまだ公表していないが、如何やら火事の原因は院長の放火らしい」

『っ！？』

「燃え方が酷かったのは院長室で、遺体の傍には燃料タンクとライター、それから睡眠薬の瓶が転がっていたそうだ」

「それってつまり……」

「焼身自 殺って云いたいの？」



くるっと名探偵が刑事さんの方を向いた。



ウチも考えてみたが、院長が自 殺なんてするとは思えない。



「自 殺の動機になるか分からんが、院長について妙な噂が立って居た」

「噂って……？」





「……病院長、杉浦蓮司は、密輸品の仲買人ではないかという噂だ」

『なかがいにん？』

「売り買いの間に入って仲介する者の事だ」



聞き慣れない言葉にウチが呟けば、眼鏡さんが簡単に説明をしてくれた。



「密売の取引に問題があって、行き詰まり命を絶ったと？」

「その可能性が高いってのがうちの見解だ。実際、病院の経営が傾いていた様で、入院患者も他の病院に移す予定だったと聞いている」



そうだったのか。

食事も段々質素になったのもその所為か。



……と云うか密売っていけない事だよね？

院長、その取り引きの間に入ってたって事は、つまり――。





『――院長、悪い事してたの？』





ウチがそう云うと、その場が静かになってしまった。



……ちょっと、大人の人が揃いも揃って静かにならないでよ。

不安になるじゃないか。



「……今はまだ捜査中だ。密売組織と繋がりがあった場合、探偵社にも協力を依頼したい」



「良し、やろう」



そう云って椅子から立ち上がった名探偵。



「その調査の依頼、引き受けるよ……



　……Aが」



『……うえっ！！ ウチッ！？』



突然の提案に驚いて名探偵を見る。

冗談では？

と思ったけど名探偵はそんな顔をしていなかった。



「院長が本当に悪い事していたか、知りたいでしょ？」

『……うん』

「だったら！ 調べるしかないよねぇ」



名探偵は刑事さんから資料を受け取り、眼鏡を掛けた。



「それじゃあ！ この僕から有り難い助言をしてあげようっ！」



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