力になりたい ページ50
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太宰治に云われ、私は美術館へと向かった。
美術館の入り口前に、車が止まっているのが見えた。
遠くから見えたのは、後ろに倒れている真っ黒い青年を、庇う様に膝を着く織田作さん。
それと、灰色の襤褸を纏った白髪の男だった。
白髪の男は車に乗り込み去って行った。
それを見据えていた織田作さんは、深く溜息を吐いて地面に座り込んだ。
『織田作さんっ!』
「っ! A、何故此処に?」
バッと顔を上げて驚く織田作さんに近付いた。
『太宰治に云われて、此処に織田作さんが居ると……っ!』
とそこで、織田作さんの胸に撃たれた痕がある事に気付いた。
『お、織田作さんっ! 撃たれて……あ、穴がっ……し、止血っ!!』
「落ち着け、大丈夫だ」
紙を出して織田作さんに貼り付け始めた所で、私の肩を掴んで止める。
良く見ると出血はしていなかった。
防弾ベストを着ていたお陰で無事だった様だ。
安心して思わず息を吐いた。
「止血なら彼にやってくれ」
織田作さんが振り返り、気絶している青年を見遣る。
病弱な程に白い肌に、細い体。
至る所に傷がある事が窺える。
私は傷の部分に紙を貼り付けていった。
聞けば、彼は太宰治の部下で、名は芥川と云うらしい。
どの道、関わらない方が良いな。
さっきも危ない目に遭ったし。
止血が終わると、織田作さんは芥川さんを背負って歩き出した。
さっき、去って行った男は、海外から来た犯罪組織の長だそうだ。
街で起こっている爆発事件はその組織の手に寄るものらしい。
『厄介なことですねぇ……』
「お前が心配する事じゃない」
そう云いながら織田作さんは私の頭を撫でた。
「これはポートマフィアの問題だ」
『でも、何か私にも出来る事は……』
「A」
立ち止まる織田作さん。
しっかりと此方を見つめる目は真剣その物だった。
「心配してくれるのは嬉しいが、お前まで巻き込む訳には行かない」
『……』
「此方側の事情に関わって欲しくないんだ。お前も、他の子供達と同じく、平穏に暮らして欲しい」
織田作さんは優しい。
私も事も、他の子供達の事も考えて、養ってくれている。
そんな彼の力に成りたい。
そう思っているのだが、そんな私が逆に織田作さんに心配を掛けてしまっている。
私はただ、黙って頷くだけだった。
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ネコぱふぇ(プロフ) - 名無し28935号さん» ご名答! 勝手に拝借しましたぁ('Д')ハハハ (2018年1月24日 1時) (レス) id: 20fe41653a (このIDを非表示/違反報告)
名無し28935号(プロフ) - 竹一って人間失格の耳だれの男の子ですよね!!!!!!!!!!!(違ったらすいません) (2018年1月24日 0時) (レス) id: 8c7fb5ba75 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - なーさんさん» ご指摘の部分はちょっと加えて修正済みです。応援ありがとうございます! (2017年12月26日 1時) (レス) id: 20fe41653a (このIDを非表示/違反報告)
なーさん - ネコぱふぇさん» いえいえ(汗)これからも楽しみにしておりますので頑張ってください!応援しています(*´ー`*) (2017年12月26日 0時) (レス) id: addadc6628 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - なーさんさん» ぐふぅ……ホントだ勉強不足で済みません(/ω\)ご指摘感謝します!これからも頑張ります! (2017年12月25日 21時) (レス) id: 20fe41653a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2017年12月4日 0時