入水日和だったのでしょうねぇ ページ2
武装探偵社の事務所で書類整理をしていると私の携帯が鳴った。
出てみれば、イラついた口調の国木田独歩さんだった。
『はい、美月です。如何しまし――』
《如何したもこうしたもないっ！ あの自 殺愛好家めっ！》
相当ご立腹の様で、その様子から大体見当が付いた。
怒鳴り声を避けて、耳から携帯を放した。
しばらくして、耳に中てた。
『……あの〜また、自 殺に走っちゃいました？ 太宰さん』
《『良い川だね』とか抜かしおっていきなり飛び込んだぞ！》
私はやれやれと溜息を吐いて窓の外を眺めた。
『入水日和だったのでしょうねぇ……』
太宰治さんは、そういう性質の人間であるからして、こればかりは仕方ないことである。
私が携帯越しにそう呟いたのが聞こえたようで、電話の向こうで深い溜息が聞こえた。
頭を抱えている国木田さんの姿を、容易に想像ができた。
《呑気な事を云ってくれるな……今、太宰が何処に居るか追跡してほしい》
私の異能力「読まずに死ねない」は、紙を操る能力である。
能力を付加させた紙を持っていると、その人が何処に居るかが分かる――云わば追跡装置の役割を成す。
頻繁にふらりと出掛けてしまう太宰さんには、件の紙を忍ばせている。
無論、太宰さんには内緒だ。
しかし、今回それは役に立ちそうにない。
『……あの〜太宰さんは川に飛び込んでしまったので、紙が濡れて追跡不可能です。すみません』
《何っ！？》
私の能力は紙を使用するのだが、弱点が多い。
水に濡れれば使えない。
火を点ければ当然、燃える。
しかも、残念な事に、今回忍ばせておいた紙は、防水対策が成されていなかった。
《……と云うことは、川に沿って捜せということだな》
『……そう云う事に成っちゃいます、はい』
わなわな震えて憤っている国木田さんが目に浮かぶ。
しかし、こう成ってはそうする他無いだろう。
腹立たしい事この上無いと云った雰囲気が、携帯越しでもひしひしと伝わって来た。
如何にか怒鳴りたい衝動を抑え、一度深呼吸して、落ち着いた口調で国木田さんが口を開いた。
《分かった。すまない、時間を取らせた》
国木田さんはそう云ってから、書類が粗方片付いたら帰って良いと付け足し、通話を切った。
私は携帯を机に置いてから、川沿いに歩く国木田さんを想像して、溜息を吐いた。
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ネコぱふぇ(プロフ) - ステラさん» コメントありがとうございます。続編・番外編もよろしくお願いします。 (2018年10月9日 23時) (
レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - すごく面白かったです。(≧∇≦) (2018年10月9日 17時) (レス) id: 62ccad48f7 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - 美花さん» コメントありがとうございます。喜んで頂けて嬉しいです！ (2018年10月7日 10時) (レス) id: c2e869a79d (このIDを非表示/違反報告)
美花 - 面白かったです。サイコー!(〃^ー^〃)コメントがないのが不思議な位です…。 (2018年10月7日 9時) (レス) id: f78291fe45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ネコぱふぇ
| 作成日時：2017年10月21日 23時
