男装しているわけではない

第24話 ページ31

「危ない!!!!」




聞こえたのは団長の声だった



村人が騎士団の邪魔にならないようにと、僕たちからはある程度距離ができていた


魔力を感じることも気配を感じることも出来なかった僕は相当疲れていたんだろう




はっとして後ろを振り向けば、手を握りあい、その両手に酒瓶のようなものを持ったあのときの二人組がこちらに走ってきていた






「死ね、カイル!!」


「御前はここで俺たちと一緒に終わりだ!!」






そう告げた二人組は、僕たちから2,3メートル離れたところで瓶を地面に叩きつけた


何が起こるか分かったものではないが、彼を傷つけないためにと身体が勝手に動いた





自分より少し背の高い兄を腕の中に閉じ込める


気配も感じ取れない僕は相当に疲れているはずだから、場合によっては防衛魔法も効かないだろう






ﾄﾞｶﾞｧｱｱｱﾝ






そんな音と共に熱風に包まれた


ｼﾞｭﾜ、なんて音と背中に走る鋭い痛み




少しでも気を抜けば倒れてしまいそうな、そんな痛み


そんな中でも兄を優先してしまうのは今までの教育が実ったからなのか





貴『兄上‥、お怪我は、』


カ「ぃ、てぇ‥」






そう呟いた兄の頬にはさっくりと、ガラスできられたような切り傷が出来ていた


ダメだ、兄は血が止まりにくいのに



可愛らしく垂れた目にはうっすらと涙が浮かび眉間に皺を寄せて、表情を歪めている




はやく、治療しないと

兄の頬に手を添えて治癒魔法をかける




「傷一つ付けるな」




その言葉が脳内で木霊する




「名前!!」




団長の呼ぶ声がするが、そんなのは無視だ


少しすれば漸くふさがった傷に安堵する




そうすれば思い出したかのように感じる痛みに思わずふらついた





貴『‥っ、‥帰還しましょう、』


団「何言ってんだ、治療が先に決まってるだろ!!!!」


貴『僕は、大丈夫です、‥早く帰還して兄上の無事を知らせないと、』





静まり返っている村人達


どうやら僕たちは先程の2人の自爆に巻き込まれたらしい

きっと兄が何か恨みを買っていたんだろうけど





団「名前、そんな火傷で馬なんて乗れるわけないだろ!!ガラスも刺さってる‥、頼むから治療をしてから、」




貴『‥団長』


『‥今日の僕の使命は、勝利ではなく、兄上を無事に帰すことです』




団長は苦虫を噛み締めたような顔をした





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