怪盗一目惚れ【怪盗キッド】

怪盗キッドの予告状�� ページ4

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　来たる当日。
　朝から屋敷は張り詰めた空気を纏っており、皆口を開かずとも、怪盗キッドのことを考えているのが手に取るようによくわかった。かく言うAもその一員であった。

　もし宝石が盗まれてしまったら。
　もし、一人の廊下で怪盗キッドに撃たれたら。
　そう考えると、昨夜はあまり眠れなかった。

　アンナの「怪盗キッドが人を殺したことはない」という言葉を疑うわけではないが、数日前まで存在すら知らなかった犯罪者なのだから、やはり不安や緊張を感じずにはいられないのだ。

　何事もなければいいけど。
　そう心の中で願いながら、Aは朝食のパンを咥えた。



　怪盗キッドの予告時刻は中森警部の推測によると午後八時きっかり。日没から約一時間が経過した頃で、陽の光もすっかり消え失せたあたりだそうだ。

　それより一時間前の午後七時までは各人普段通りに行動して構わないと言われ、Aは落ち着かない気持ちで廊下の花瓶を磨いていた。

　遠くではアンナや同僚が廊下を行ったり来たりする姿が見える。

　この中に、すでに怪盗キッドがいたりするのだろうか。Aはふとそんなことを思った。

　変装を暴くには頬を力強く掴めばいい(『ギュ』ではなく『ギュー』がコツなのだそう)とは、中森警部から既に聞いている。

　少しでも様子がおかしければAは例え奥様旦那様であろうとも頬を掴ませてもらうつもりだった(勿論本番になると掴む勇気はでないだろうが)。



　刻々と時間は過ぎ、日没時刻から七時を迎え、Aは東廊下の端に向かった。廊下は閑散としていて、先程までいた階下での騒ぎ声は一つも届かなかった。

　どうなるのだろう。
　若干の緊張を伴いながら、Aは自身の腕時計を眺めた。

　七時半。七時四十五分。七時五十分。七時五十五分。四、三、二、…。

　そして八時となった途端、屋敷が突然真っ暗になった。

　

第二話　怪盗一目惚れ→←怪盗キッドの予告状��

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