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お人好しの本音*相田side ページ32





ずっと気になっていた。数少ない試合で彼のプレイを見てきたが、彼……黒山拓はバスケの才能があった。

だが、彼は試合に出る度その才能を押さえ込んでいた。いや、押さえ込もうとしていたことが正しいか。

才能を発揮している時の彼は、それはもういきいきとしていて、ホントにバスケが好きなんだなあとひしひしと伝わってくるぐらい、楽しそうで。チームメイトに背中を叩かれたり、頭を撫でられたりしている時も、困ったような笑い声を零しつつも、その顔は心の底から嬉しそうで。

それなのに、何故。何故、その才能を発揮しようとしないのだろう。

ベンチに戻ってきた彼の顔が、あまりにも不満げで、……何処か苦しそうで。



「ねぇ、拓くんは、何を考えてバスケをやってるの」



だから、つい、心のなかに潜めていた疑問が口に付いて出てしまった。

さっきまでの苦しい表情とは裏腹に、まるで悪戯がバレたときの子供のように、バツが悪そうな顔をした彼。

コートを見詰めたまま、彼の返答をじっと待つ。試合が難航しているのもあってか、自然とコートを見る目に力が入った。




「………本音を言えば、もっと点をとって、流れを変えたいです。」

「……うん」

「……でも、それは俺がやるべきことじゃない、俺が変えるところじゃないって。そう思うんです」

「……」

「……その役目は、黒子と火神……アイツらだと思うんです。」



違う、違うだろう。
ホントに言いたいことは、そんなことじゃないはずだろう。そう言ってやりたかった……けど。



「俺が、出る幕じゃないと思うんです」

「……」


へらりと申し訳なさそうな笑みを浮かべた彼に、何も言えなくなった。

何もできない自分に腹が立った。
なんて、私は無力なんだろう。

自分の出る幕じゃないと彼は言ったが、内心活躍したくてウズウズしているに違いない。

チームメイトも、彼もバスケ馬鹿だ。もちろん私も。

前だけを見て、それでもたまに敵に圧されたときに強ばった顔をする仲間を見て、早く点をとって流れを変えたいと思うのは当たり前のことだ。

ただ、純粋に、バスケをしたいだけだというのに。

そんな彼を、“才能”という二文字が邪魔をするのだ。



「……たまには、何も考えないでボールを追いかけてみなさい。」

「え……でも、」

「カントクが許可を出したんだから!!次、全力でやりなさいね!」

「ええぇ〜〜〜!?」


慌てる彼を横に、私は再びコートへ視線を移したのだった。

帝光出身の奴ら*side高尾→←〃



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藍斗 - おもしろかったです! 更新頑張ってください 応援してます! (2016年9月10日 11時) (レス) id: 74bee11643 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ | 作者ホームページ:  
作成日時:2016年6月4日 10時

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