【◇】初恋。

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誰もいない教室で1人、自分が担当しているトランペットを吹く。

窓が空いているため風でカーテンがひらひらと視界の端で揺られ、運動部の掛け声もより鮮明に聴こえる。

中でも1番耳に入るのは野球部だ。

ボールがバットに当たるあの心地よい音。カキーンと鳴り続けるそれは、私の心を落ち着かせていく。
そんな穏やかな気持ちのまま、次のコンクールで演奏する曲を通しで吹き始める。



「ーーー、ブフォッ！」



が、普段は間違えない部分の音を豪快に外す。
バットの音と共に笑い声が聴こえたからだ。

「ヒャハハ」と一度聴くと簡単には忘れられない、とても個性的で特徴のある声が。



「＿＿＿…倉持くん、」



ぼそりと呟いた名前は外から聞こえる声にかき消される。
演奏を止め、トランペットを両手に抱えベランダへと私は足を進める。

先ほどの笑い声の主である彼は、打たれた球を取っては投げるを繰り返している。
その姿は楽しそうでどこか生き生きとしていた。



「今日もかっこいいなー……」



抱えた楽器をさらにギュッと強く抱きしめ練習する彼、倉持くんを見つめる。






＿＿＿＿私は彼に恋をしている




これが私の初恋。





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