28.夢 ページ29
A｢はっ…はぁっ…は、あっ…｣
私は無我夢中に走った。
どういう訳かあの後、後ろの林から獄卒が出てきて追われるハメになってしまった。
ここは記憶の世界？夢の世界？
色々なことがごちゃ混ぜになっていて分からない。
今、現実の私はどうなってるんだろう。
ここで死んだら…現実の私はどうなるんだろう。
…乃木の言葉、聞けなかったな。なんて言ってくれてたんだろう。帰ったらまた聞けるかな。
ロッティとユイちゃんはどうなったんだろ。
結ばれたのかなぁ。
色んな思いが、頭を駆け巡る。
追いかけられているのに冷静なのは夢だから？
足が思うように動かないのは夢だから？
逃げ道がもう無いのは、私の記憶がここで途切れてるから？
A｢…終わりなのかな。私の人生｣
後ろからどんどん近付いてくる音がする。
振り返るのが凄く怖い。
このまま前を向いて、痛い思いも怖い思いもせず現実に帰りたい。
A｢…ばかっ、甘ったれたこと言うな…！
帰りたいなら走れ、逃げろ、道なんて探せばある…！｣
私は思いっきり自分の頬を叩いた。
乃木に会うまで死ねないって言ってたじゃん。1度会ったから死んでいいの？違うでしょ、私。
何回でも乃木に会いに行くんでしょ!!
私は頭をフル回転させて周りを見渡した。前と右には暗闇が広がっている。後ろは獄卒がいるからダメ。
だったら残るは左…！
私は急いで左に向かって走った。
例えどんな困難が待ち構えていようが、私は絶対に乗り越えてみせる。大切な人に会いに行くために。
走っていくうちに、段々と景色と足場が変わった。
A｢ここって…｣
私が進むと波がたち、さば…さば…と音を立てる。
一面に広がる水を見て、私は分かった。
A｢三途の川…？｣
……何か、あった気がする。
私は昔、ここで……。
A｢っ…！！｣
思い出した。
私はここで、
誰かに引きずり込まれるんだ。
瞬間、私の視界は暗転した。
ーーー
ユイ｢…乃木さん、大丈夫かな｣
Aちゃんの部屋で同じように眠っている乃木さんを見つめながらそう呟いた。
ロッティ｢…乃木が行ったなら心配ない。
なんて言ったってあいつは"神様"だからな｣
ロッティは2人を見つめつつ、優しく微笑んで言った。
分かってるよ。僕も乃木さんに救ってもらった身だもん。
でも、今回は違う気がする。
乃木さんだからこそ、嫌な予感がするんだ…。
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作者名：霊来 | 作成日時：2023年7月27日 4時
