【声優】幸せの彩り

手 ページ36

神谷side

神「俺らはここにいるからさ。」



格好よさげにそんな言葉を言ってみたが

本当は自信が無かった

なんて言ってあげればいいのか分からなかった




だって一番辛いのは本人で、俺はどうこう言えない


いい大人であるのに俺なんかにはAがどれだけ辛いか分からない
でも、それが分かるから軽々しく真実を口に出来ない



ただ、焦ってどうしていいか分からないような子供を見て俺も不安なのかもしれない



そんな気持ちを隠すように
さっきよりも顔色が良くなったAの頬をもう一度軽くつねる


夢じゃないよ、ここにいるよ、
その想いが届くように



神「夢じゃなかったでしょ？」

そう言うとAは嬉しそうに笑ってコクンとうなづくのだ
それを見て俺も満足して笑った



「やっぱり神谷さんの手は綺麗です」

神「まだ言うか。」



「わぁ細い」「羨ましい」と言いながら俺の手で遊んでいるAを見ていると猫と戯れている気分になる


しばらくそのまま遊ばせていようかと思った時


「話を聞いてくれてありがとうございます」

静かな呟きが聞こえた



目線はあくまで俺の手を向いている


しかし、その様子を見ると手の話題は彼女の照れ隠しであったのだろうと窺えた


その子供っぽさに思わず笑みがこぼれる


神「こんな手でも、少しくらいの力にはなれると思う。
俺の手でいいなら、いつでもつかんでいいよ。


だって俺の事、信じてるんだろ？」

少しだけ意地悪な顔をしてAを見る



一瞬ぽかんとしたAだったけど、すぐに笑って言った




当たり前じゃないですか、

「信じてますってば」






冗談めかしたその笑顔がどこか泣きそうに見えたのは気のせいだったのだろうか

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