見ない ページ33
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トントントントン……____
遠くから聞こえてくる心地いい響きのリズムで自然と意識が浮上していく
漂ういい匂いに、ゆっくり目を開けると自分がソファーの上で横になっていたのが分かった
掛けられていた毛布から中村さんの香りがして、今の状況を把握する
お昼ご飯を作って、食べて、
そのあと寝ちゃったのか、私……
ようやく体から力が抜けたが心臓はまだバクバクうるさい
あれ、今何時だ…
時計を確認するともう夕方ごろだった
外も暗くなってきている
キッチンから聞こえる、野菜を切る音は相変わらず心地良く耳に届く
ちゃんと、誰かがいる
先程の静かすぎた家を思い出すと寂しさで凍えそうになってしまう
掛けられている毛布は暖かくて、
横になっているソファーは大きくて、
キッチンから心地のいい音が聞こえて、
大きな窓の外は星が見え始めていて、
これが全部、夢だったら、
これが全部、私の想像だったらどうしよう。
本当にこっちが、現実………?
もし、神谷さん達が_____
いたずらに不安が広がってゆく
起きたばかりのふわふわした気分が逆に不安を募らせる
ぐらぐらした不安定さを感じながら、どこか奥底深くで黒いものが滴り落ちた。
どろり、
それが不気味に速度を上げて視界を黒で染めてゆく
ゆっくり着実に侵食される
____あれ、私、どっちにいるんだろう
.
.
「!」
突然、
ポン、と頭に何かが乗った。
起きたの
静かな空間に音が落ちてきた
顔を上げると神谷さんが私が寝ているソファーの前に腰を落として右手を私の頭に置き、私の顔を覗き込んでいた。
神「大丈夫?顔色悪い…ヤな夢でも見たの?」
心配そうな神谷さんの目から無意識に目線を反らして、首を横に振った
嫌だな……そんな顔をさせたくない
「…おかえりなさい」
神「…うん、ただいま」
首を振って否定したときに何か言おうとした神谷さんを遮って先に声を出した
そのまま、言おうとした言葉を飲み込んだ神谷さんは、ただため息をつく
神「あんまり寝てないんだろ、下野くんが心配してたぞ。
ちゃんと寝ないとだめだろ?」
小さい子を叱るように話す声に何故だかすごく安心した
不安でうるさかった心臓が不思議と静かになってゆく
…神谷さんの落ち着いた声好きだなぁ
いつの間にか胸に渦巻いていた黒い重みも軽くなっていた
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咲(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました。大号泣です(´;ω;`) (2019年10月28日 8時) (レス) id: b485c04083 (このIDを非表示/違反報告)
はやゆか - この作品を読んで号泣した一人です。更新楽しみにしています。 (2019年1月30日 2時) (レス) id: 2334c267ac (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 最後、めっちゃ泣きました。こんなに泣いたの久しぶりってくらい。続編はどんな感じになるんだろう。これから読むのが楽しみです!! (2018年10月16日 13時) (レス) id: 2082d86ac9 (このIDを非表示/違反報告)
声優って良いよね。 - 号泣じゃ収まらん......大号泣...... (2018年7月14日 15時) (レス) id: d5b8d65653 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ - …………。°(°`ω´ °)°。ピィー!!!!!!!なにこの作品!感動するんだけど!。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。ウワァァァン!!!!!更新頑張ってください!!!!! (2017年11月14日 4時) (レス) id: 15a90a5b08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:國村 楓 | 作成日時:2016年7月3日 6時