1口目 ページ1
俺の名前は陰山A、18歳。
華の男子高校生だけれど、
彼女ナシで友人も少ない(陰キャ)という枠組の中にいる。
クラスではいつも1人で、俺は寂しい高校生活を送ってきた。
___これまでは、な。
…今、俺はとある"悪魔"と契約をしている。
え?夢の話でもしてるのかって?
いや、これは現実のこと。
だってほら、見てくれよ俺の隣。
授業中、授業参観の母親さながらにこちらを見守る黒い影。
ピシッとしたスーツを見に纏った
スラッと背の高い、非常に顔の整った男。
見た目こそは人間そのものなんだけど、彼はれっきとした悪魔だ。
今、この教室では平然と授業が行われているが、
君はおかしいと思わないか…?
「教室に正体不明の男がいるのに、何故こうも淡々と授業が出来るのか」と。
その答えは
数学教師、山田
魅了術と言われれば、相手に自分のことを惚れさせる……みたいなイメージがあるだろう。
しかし、悪魔達の扱う"魅了術"というものはある意味、記憶操作のそれに近いらしい。
だから、
山田敬はこの悪魔のかけた魅了術、いわば記憶操作によって、"教室にいる正体不明の男"を"今日この学校にやってきた教育実習生"だと思い込んでいる…という訳だ。
「で、あるからして…ここも同じ様に解くと答えはもう分かるよな?
今日は10日だから名簿10番の……お、陰山か。
よし陰山、ここの答えは何だ?」
「…どぅえ!?
は、あえ、えっと…」
いけない、また誰かに語りかけてしまった…
慌てて視界を黒板に戻すと、山田が訳分からん数式のイコールをチョークで指し、俺の回答を催促していた。
やっべ…全然話聞いてなかった…。
こんな時、賢い友達でもいればささっと小声で教えてくれるものだが、生憎俺は友達のいないぼっちくそ陰キャ…
うわ…また山田に怒られる…
放課後居残りを覚悟し、
諦めかけたその時、すぐ隣から囁く声がした。
「…6です、ご主人様。」
「あっ、え…
えっと、6…ですか…?」
「………おぉ、正解だ。」
山田は少し驚いた顔をし、それから小さく微笑んだ。
「今日はしっかり話を聞いてたみたいだな、陰山。
陰山の言う通り、ここの答えは6だ。
じゃあ、解説していくぞ。
まず最初に…」
…ほらな、
俺、ぼっちじゃなくなったんだ。
嬉しいよ。
でもさぁ、
悪魔っていうのは、それ相応の代償を求めてくるんだろ…
なぁ、イル?
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作者名:みゅん | 作成日時:2020年4月25日 8時