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「記念や思たら頑張れるんちゃう?」
「そうだね...音源にすればずっと残るもんね」
「... そう言われてみたらAの曲にバラードあらへんなぁ?ワシは聞きたいっち思うけど...嫌なん?」
「嫌じゃないけど、なかなか録音に時間かるから...申し訳ないじゃん」
誰も居ない屋上で、膝枕をしてもらいながら話す。
こはくに話してよかった。
彼は賢い、あたしの考えもしなかった事をアドバイスしてくれた。
「Aは忘れてるようやけど?燐音はんとこも兄弟やで。一応な?」
「ヒロくんか!忘れてたわ...すっかり」
「...ラブはんばっかり見てるからやないの?」
やんわり頬を摘まれる。
「クォーターだからね、見ちゃうよ!」
「そら置いといて、あの兄弟想像して歌うたらええんちゃう?」
「すごい!さすがだね、こはく!2人の話、知ってるなら教えて?」
いろいろ聞いてる限り、昔は仲良しで今は必要最低限のどこにでもいる兄弟らしい。
うちがおかしいのは知ってたけど。
歌詞のまんま、彼等は離れてるけどユニットも違うけど兄弟なんだ。
使わせてもらおう!
「ラブはんて、そないにかっこええの?」
「可愛い、だよ?こはくも可愛いけど...ラブくんは可愛いんだよ、どんなにかっこよく踊っても。こはくはかっこいい時ちゃんとあるじゃん?得だよ〜それ」
人目を気にしてくれるこはくは、気恥ずかしいのか上を向いてしまう。
「もう時間だね、教室戻ろうか?」
ありがとね、と階段の2人きりの踊り場でキスをした。
ラブくんに少し嫉妬したんだろう、そういうとこは可愛い...怒るから言えないけど。
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その日の夕方からレコがあった。
マネにはラインで燐音くん兄弟のポスターを用意して貼ってもらっている。
「おかえり〜A」
何も知らないりっちゃんは嬉しそうだったが、現実を知ってテンションがだだ下がりだ。
「あたしこんな歌詞泣いちゃうから、この兄弟を想像して歌うからね!りっちゃんもそうする?」
「俺は...Aの事見て歌うからいい」
あたしのハスキーさがりっちゃんの優しい高音を邪魔しない様に、出来る限りそっと歌った...
蜂蜜を舐めつつ何度か撮った。
レコの間、お兄ちゃんらしく手を繋いできた。
あたし達はこの兄弟みたいに離れたりはしない。
遠くから見守るなんて、そんな常識は朔間兄妹にはない。
あたし達は何も変わらない。
歌っていて手に力が入ると、強く握り返してくれた。
「え〜泣かないの?」
泣かないよ、と録り終わって安心の余りハグをした。
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作者名:馨 | 作成日時:2020年8月26日 4時