あんスタ～大好きな兄弟～２【朔間零・凛月】 (ページ19)

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曲が上がってデモが届き、零くんと聞くといい曲だと言う。
「零くんてさ、曲聞く時は歌詞より音聞く人？」
「あぁ...言われてみたらそうかもな？Aは違うのか？」
「あたしは歌詞も入ってくるよ。曲はいいのに、歌詞残念だな～って思うアーティストもいたりするし」
「練習するか？俺が代わり歌ってやるし」
「やるからには！動画で零くんバージョンお届けしちゃうよ？」
「いいぞ？お前が歌えたら、だけどな」
零くんにはりっちゃん用のデモを渡し、1時間後にリビングで合わせる事になった。

とりあえず部屋で1回聞き、2回目はキーがちゃんと合っているか鼻歌で歌う...キーはばっちりだ。
歌詞を聞き、目で追う。
合わせる時、最悪メロディーラインを歌えば歌詞なんてどうでもいい。
1時間後に零くんもイヤホンをしたままリビングにやってきた。
「一応、交換して聴かせて？」
お互いの曲を交換して2・3回聞く。
「合わせるか？」
「いいよ...キー大丈夫そう？」
「なんとか出るな」
「さすがみかち歌えるだけあるね」
「ほら。忘れないうちにやるぞ？」
あたしは歌詞を誤魔化して歌ってるのに、零くんはしっかり歌ってくれる。
「ちゃんと歌えよAも。練習の意味ねーだろ」
深呼吸して歌うけど、無理だった。

ーこんなにも2人は似てるあたしの中に貴方がいるー

そんなのりっちゃんも零くんも、あたしと同じ血が流れてる...
兄妹で歌うから作詞家が気を使ったのか、そんなのいらないお世話なのに。
練習は何回も続く...零くんはこんなに鬼だったっけ？
歌えば歌う程、昔の記憶や2人の癖が目に浮かぶ。
2人と離れるのは想像でも苦痛でしかない。
挙げ句の果てにあたしの結婚式が浮かぶ。
いつかは離れて暮らすんだ...涙が浮かぶと、はいはい、とばかりに零くんは腕を広げる。
「分かってて何回も歌わせるんでしょ？」
「今思う存分泣いときゃ、本番は大丈夫だろ？」
「できない...お蔵入りにする」
「できるよ。なんだかんだいつも失敗しないのがAだろ！」
「これは無理～」
「大丈夫だよ、俺はいなくならない」
零くんの大きい手は、あたしの背中を宥めてくれる。
「これ...まだやるの？」
「Aが可哀想だからやめとくよ」
「でも動画で歌ってね？あたしが泣いても」
「見てるファンの前でも、こうやって宥めりゃいいんだろ？」
「意地悪～」
「いい虫除けって言ってほしいな」

身長差で、あたしの耳には零くんの規則正しい鼓動がしっかり聞こえる。
匂いを吸い込むと安心した。