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恋とはこういう物なのだろうか。
「私もまだ若かったから、食事に誘えばよかったね。いきなり告白しても、そりゃ知らない人なら困るか...」
「班も違ったし、宇井さんがどういう人かまだよく分からなかったから」
「考えずに即答でフラれたんだ、ショックだったよ」
喫煙所で辛そうな宇井さんを思い出した。
お互い若かったという事で笑い話になった。
「宇井さんお酒強いんだね〜」
「Aと比べるとだよ。丈さんの方が強いと思うぞ」
「よく聞いてたな〜酔った宇井さんから愚痴られるって、丈さんから」
丈さんという言葉と共に、綺麗な顔が迫ってきて唇に触れる。
「ごめん、先に丈さんの話をしたのは私だったね」
恥ずかしくなって、お酒で誤魔化した。
この歳まで、あたしは仕事とお酒しか覚えられなかった、CCGなんて殉職さえしなければ女にはそんな職場だ...
「飲ませすぎてしまったかな?行こうか?」
「宇井さんは飲めたんですか?愚痴聞きますよ、あたし?」
「Aがいるからセーブしたよ」
タクシーが拾える場所まで、歩いていた時、さっき考えた殉職の事がふと過ぎった。
あのハイルちゃんも、先日逝ってしまったんだ...
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タクシーを拾い咄嗟に手を握ると握り返された。
同期だった宇井さんは大人になったんだ...
着いたのは宇井さんの高級マンション。
驚いたのはお酒の種類だった...ホテルのミニバーの様な数に感心した。
「飲み直すにしても、面倒になるんだからシャワー浴びておいで」
お互いシャワーを済ませて飲み直す。
「マティーニは好きなのにオリーブが苦手なんです」
「残せば?」
「でも、たまに1年に1回食べてもいいかな〜って気になるんです。ないですそういうの?」
「あるね、余り好きじゃないけど、なんとなく選んで食べる時。あれなんなんだろうね...」
と笑って話してるのに、宇井さんにはバレてしまう。
「浮かない顔だな、そろそろ寝ようか」
お互い班員は殉職した...
「あたし経験もしないで、そのうち死ぬんですかね。入局して結婚して仕事辞めればよかった」
今からでもできるだろ、と引き寄せられ深くキスをする。
「あたしが死んだら今のキス...後悔しますよ」
「いや、今しないと余計後悔する」
「あたし今日、宇井さんを好きになりました」
「なら抱いても問題ないんだな。私は結局忘れられなかったよ」
ずっと自分を見てくれていた人なら、安心して全てを任せられる様な気がした。
嫌いなはずだった彼のその腕の中は、とても温かった。
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作者名:馨 | 作成日時:2020年3月24日 23時