アインの文書保管庫 (ページ8)

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祈りは闇の中で託されるページ8

まずい、戸口が開いている。

「モーリス！ダメだ！戻ってこい！」
「機動部隊も間に合わない、みんなを危険に晒すわけにはいかないんだ」

自分の命など顧みず、仲間を押しのけ走り出す。せめて、聖歌隊の奴らと合流出来たら。
叫び声をあげる彼らを目に焼き付けながら、静かに扉を閉じた。

内部の構造はめちゃくちゃである。もちろん現状も。

「……なんてことだ」

中には干からびて胸がぽっかりと空いた遺体がゴロゴロ転がっていた。中には見覚えのある同僚もいた。吐き気を催しながらも、慎重に進んで行く。

「……なんだ。救助か？諦めろ、ここに入ったが最期だ」
「誰かいるのか？」
「こっちに来い、そこに居たらお前死ぬぞ」
「わかった」

こちらに向けられたペンライトを頼りに進む。

｢お前、どこのやつだ？聖歌隊か？村の野郎どもか？｣
｢聖歌隊の2班目だ。お前たちを助けに……｣
｢もう一度言うぞ。諦めろ｣
｢なぜ……？｣
｢出ようとした仲間が死んだ｣
｢え……は……？｣
｢落ち着け｣

救出なんて無意味だったのか？あの時駆け出したのは無駄足……？

｢自己紹介が遅れた。俺は聖歌隊のエージェント・バークレー｣
｢……2班のエージェント・モーリス｣
｢そうか。ありがとうな｣

俺はバークレーみたいに強くない、祈れるかも怪しいんだ。

｢しっかりしろよ、モーリス｣
｢わかってるよ｣
｢外に出たバケモンはどうなった？｣
｢……外の部隊が倒した｣
｢ほう……察しがついた。お前はすげえよ｣

羨ましい、強くて賢くてどこかフランクなバークレーが。

｢まずい……奴らが来た｣
｢ねぇ、バークレー｣
｢んだよ、急に｣
｢ありがとう、俺、頑張るから｣
｢おい、まさかお前……早まるな！｣
｢君ならきっとやれるよ、だから｣

闇の中で蠢き始める怪物に祈りを込めた弾丸を放つ時が来た。

｢時間は稼げるだけ稼ぐ！わかったことを書き留めておいてくれ！｣
｢……それがお前の意思ならば、否定はしない。頼んだぞモーリス！｣

この命が尽き果てるその時まで撃ち続けようではないか。

｢俺一人の命でみんなが守れるなら、武器となるなら、それでいいんだ｣

彼の活躍はほとんど知られていない。
だけれども英雄は知っている。彼は先駆者であり、勇敢であったことを。

今回登場したSCP
SCP-1983 - Doorway to Nowhere
by DrEverettMann
http://www.scp-wiki.net/scp-1983
http://ja.scp-wiki.net/scp-1983(翻訳)