忘れられない思い出

12　回想10　ー錯綜篇5ー ページ13

ゆりside
アイツと刃を交えている時、私は隊長に拾われたあの時から、隊長にずっと従い続けていた今までを思い返していた。
あの頃の私は、隊長にただ付き従うことだけが、自分のただ一つの使命であり、自分が生きている唯一の意味だと思っていた。
しかし、今はその気持ちに少し疑念を持ち始めていた。
本当に、隊長に付き従うことだけが、自分が生きている意味なのだろうか…？
もっと、別の生き方が、あるのではないか…。
と。そう思うようになってしまっていた。
そして、今の今まで、私はその気持ちを捨てきれなかった。
これはもう、隊長を裏切っていることと、同じことだ。
(私はもう、終わりだな…。)
そう思った。
そして、それはなぜか、アイツに再会してから思うようになったことであった。
しかし、昔からの負けず嫌いの性格もあるせいか、私はそれを認めることを頑なに拒んでいた。
昔の記憶が、蘇ってきた。
アイツと、刀を交えたあの時…。
思い返せば、アレが一番の私が楽しかった、と思える思い出だったかも知れない…。
その瞬間、私は、(アイツと一緒にいれば、私は私でいられるかも知れない。)
と、急に思ってしまった。
思ってしまったその感情は、離れることは出来なかった。
…振り切ることは、出来なかった。
そしてそれは、涙と化していった…。
生まれて初めて、流したかも知れない、涙だった…。
苦しい…。

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