黒い奴、隷少年 (ページ6)

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少年>>4 ページ6

(……逃げなきゃよかった)

少年は若い。

たとえ病気になっても働ける。

いつかは死ぬだろうが、その時まではまだ間があった筈だ。

(……これじゃああそこの方がましだ)

少年の汗を吸ったボロが冷やされて凍り、その上に雪がこびり付いて積もっている。

雪。

雪。

雪。

真っ白だ。

どこもかしこも。

何もかも。

雪に足をとられて少年は雪の上に倒れ込んだ。

身体の芯まで寒いが、どうしてか冷たさは感じない。

もう雪は冷たくない。

(……喉がかわいたなぁ)

少年は舌を伸ばして雪を舐めた。

微かに苦かった。

(……眠い)

少年はいつしか目を瞑っていた。

眠りを妨げるものは何も無かった。

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ないはずだった。

どこか真っ暗な場所で仲間達がひそひそと語り合っている。

『俺らは家畜じゃねぇ』

『そうだ。人間だ』

『もとから奴、隷だったわけじゃねえんだ』

『俺なんか、ノルマンの奴らに村を襲われるまでは結構いい暮らししてたんだ……』

『女房は俺の前でやられて、殺された』

『俺は、娘まで』

『なんで俺らがこんな境遇に甘んじてなきゃならんのだ』

『逃げよう』

『あぁ、逃げよう』

『俺たちは家畜じゃない』

『無理やり奴、隷にさせられたんだ』

『奴、隷じゃない』

『逃げるんだ』

『逃げるぞ』

『逃げよう』

『そうだ』

『逃げて――――』