近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ9)

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「A。大丈夫か？」

「っ、だ、いじょう…」

「すまんが失礼するぞ」

俺の返事も聞かないで部屋に入ってくる。驚いた顔をしていたけど直ぐに俺の傍に寄ろうとした。シールド魔法でリリア先輩を寄せないようにする。申し訳ないのは重々承知。だけど、今αに近付かれると余計に悪化する。

「ご、めん…なさい、」

それだけ言って保健室に移動する。エイナさんとカイラさんがいて俺の呼吸を整えてくれる。過呼吸も治って経緯を伝える。リリア先輩。すげぇ、困惑してた。そりゃそうだよな。助けようとしてくれたのに。俺何やってんだろ。

「そっか。でも、仕方ないよ。A君はΩとして適切な対応を取ったと思うよ」

「でも、俺リリア先輩に失礼な事しちゃったんです」

「そう思えてるならいいんじゃないのか？」

そう言って俺に珈琲を差し出す。番済みのαは安心出来る。触れたり。抱き締めたりだって出来る。なのに。普通のαだとどうしてもダメなんだ。直そうとしても直らない。指が触れるだけでも辛い。だから、満員電車とかΩになってから一度も乗ってない。この学園に入学したのだからこんな事で過呼吸を起こしていたら意味が無い。

「ゆっくり慣れていこうね。あまりに頻度が多いとヒートの定期が崩れるかもしれないから」

「え、そうなんですか？」

「うん。まぁ、余程の事が無い限りなんだけどね。例えば1週間に4回過呼吸が何回も起きたりとかαと行為があったり…とかね」

そうなのか。初めて知った。Ωは弱いんだ。弱くて。脆い。ヒート中に襲われれば逃げられるなんてほぼ不可能。力が上手く入らないから。何に対しても欠点があるΩ。でも、だからって諦めるのは絶対にしない。リリア先輩に謝りに行こう。万が一の時にエイナさん達と一緒に行く。

「リリア先輩。Aです」

「A！大丈夫じゃったか！？」

心配そうな顔して俺を見つめる。迷惑かけちゃったな。

「大丈夫です。心配かけてすみません」

「そうか…ならいいんじゃ。なに、Aが謝る事はないぞ。どれ、わしらとお茶でもせんか？」

少し体が強ばる。エイナさんに目配せすると良いんじゃない？って俺を部屋に入れる。中にはマレウス先輩と2人の寮生。1人は食事処のこがいた。

「あ、のさ…。さっきはごめんね」

「別に構わん！それより早く席につけ！」

「あ、ありがとう」

カイラさんとエイナさんの間に座る。夫婦の間に入るのは些か気が引けるけどそこじゃないと安心して座れない。