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「俺トイレ行ってくるわ」
「おー」
人混みを通り抜けてトイレに入る。気温が気温なので俺の顔が赤い。白いから余計に赤いなぁなんて思いながら日焼け止めを塗ろうと腕を捲りあげた時強い力で引かれる。
「いっ…」
「うっわ、相変わらず女みてぇな腕」
聞き覚えのある。嫌いな、忘れたい、憎い声。上手いこと力が入らない。でも、魔法なら使える。強い風を打ち付けて吹っ飛ぶ。俺の腕を離さず俺まで巻き込まれるかと思ったけど勢いよく振り払った。
「いって。逃げられる訳ねぇだろ!」
背中に鋭い痛みが走って直ぐに注射針が刺さったのだとわかる。なにかが俺の中に流し込まれて目の前がグラつく。
「なに…これ、」
「お前はΩなんだからこの学園には不釣り合いなんだよ」
「う、るさ…」
「俺さぁ、お前のせいで中学退学になって折角の魔法学園の推薦も取消になったんだよ。なのにお前は名門魔法学園に入学してよ。俺はαなのにΩのお前がなんで俺より優れてんだよ!」
ガンッ、って大きい音が耳元で鳴る。力が入らなくてしゃがみ込んだ俺の顔の隣に足を置かれる。胸倉を掴まれて無理矢理立たせられる。グラつく視界に映る赤らんだ顔に鳥肌が立つ。
「お、まえ…なに、し、た」
「薬だよ。ヒートを無理矢理引き起こさせる薬。俺の会社が開発した薬なんだけどさ、使えるかどうか試したんだよ」
腰に回された腕に抱き寄せられ当て付けられる。寒気と嫌悪感が体に走る。気持ち悪い。
「Ωのお前がなんでこの学園にいるのか疑問に思ったけど股でも開きまくってんのか。確か、あのドラコニアがいるって聞いたけどあいつか?」
「ち、がう…はな、れろって!」
強く押し出してふらつきながらドアに駆け寄る。ドアを押しても開かない。
「一応俺も魔法使えるって知ってた?」
「い、やだ!」
「Ωがαの邪魔してんじゃねぇよ」
少しでも気を緩ませた俺が悪い。Ωだからそう言われたくなくて必死にしてきたのに。なんで、また同じ事の繰り返しじゃないか。項に顔が近づいてくるのが分かる。思うように力が入らない。もう嫌だ。誰か助けて…!
勢い良く上にいたハーグリット先輩が吹っ飛んで行った。凄い力で抱き締められるけど優しい香りがして意識が薄れていく。助けに来てくれたんだ。
「フ、ロイド…せん、ぱい」
「喋んないで小エビちゃん」
抱き着いたまま意識を手放した。
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ピピ - やばいぐらい主人公が好みです! (2020年6月4日 16時) (レス) id: de2e77a72a (このIDを非表示/違反報告)
伶(プロフ) - おっふ(^^) (2020年6月3日 0時) (レス) id: 472a16cc4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田中 | 作成日時:2020年5月30日 11時