近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ40)

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「なぁ、アズール先輩ってイデア先輩と付き合ってるって知ってた？」

「え…お前知らなかったの？」

「知ってたの？！」

「いや、めっちゃ分かりやすかったじゃん」

「うっそ…」

体育会の練習中で同じ種目のエースと喋ってたら普通に知ってた。逆になんで知らねぇのって馬鹿にされた。そんな風に見えなかったし。そもそも、イデア先輩とは初対面だったんだから知らなくても普通だと思う。

「それ言うなら俺の寮長と副寮長も付き合ってるぜ？」

「えぇ！？うっそ。まじで」

エースんとこの寮長って赤髪のちょっと怖い先輩だったはず。そうか、俺の知らないだけで付き合ってる人多いんだ…。俺、全然知らなかった。結構人の事見てるつもりなんだけどなぁ。ちょっとショック。

「まじお前鈍感だよな」

「言い返せないのが悔しい…」

「そこの1年2人〜。早く並ぶっすよ」

そう言われて慌ててスタートラインに並ぶ。今日は種目を一通りの確認と実践。ここから少し離れた所に黒い巾着がかけられててその中に服が入ってる。各自の着せ替えボックスがあるからその中で着替えてゴールまで走るってのが一連の流れらしい。
大きなピストルの音で全員一斉に走る。適当に手を伸ばして取って着せ替えボックスに入る。俺の巾着が何故か異様にでかい。疑問に思いながら取り出すとクルーウェル先生の衣装。白黒の派手な服装ではぁ、とため息が漏れる。

「でか…めっちゃ暑いんだけど」

着せ替えボックスから出ると俺が多分一番乗り。そのまま走ってゴールテープを切る。

「お前が俺の衣装を選んだのか。俺ほどじゃないが、似合っているぞ。仔犬」

「そりゃ、嬉しいですね。てか、めっちゃ暑いんですけどよく先生こんなの着てますね」

「まぁ、魔法を使ってるからな」

当たり前だろとでも言わんばかりの顔をする。この分厚いコートを着て走るこっちの身にもなって欲しい。周りを見たら案外普通の衣装の生徒が殆ど。ポリスだったり、医者だったり。俺もあーいうのが良かった。エースを探して周りを見ると執事の格好をしてこっちに手を振りながら歩いてくる。俺と身長同じなのに格好良く見えるのはなんでなんだろう。なんか、ムカつく。

「お、お前…クルーウェル先生のじゃん！」

声をあげて腹抱えながら笑うからイライラしてくる。別に着たくて選んだわけじゃねぇし。適当に選んだのがこれだった。

「うっざ」

何も言わなかったら褒めてやろうと思ってたのに。クソバカエース。まじで鬱陶しい。