100万回目の告白 4 ページ4
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図書館のフリースペースで、90点代後半が並ぶあいつの答案用紙をマジマジと見る。5科目揃うと圧巻だった。
「うわー、惜しいな。あと一問で100点やんか」
「ああ、わざと1問か2問、間違えてるの」
あいつの髪が伸びていた。細くて少ない髪の毛を、あいつは一つに結んでいた。
「なんでわざわざ」
「全部100点だと、カンニング疑われるから」
「は？Aの成績やったら今更そんなんないやろ」
「全部毎回100点って普通じゃないでしょ。いいのいいの、どうせ1位だから」
諦めたような口調で、あいつ自身は自分の頭の良さを、まるで誇りに思っていないみたいに感じた。
仲良くなればなるほど、あいつには特定に仲のいい友人はいないように思えた。
俺たちは殆ど学校では話さなかったし、お互いのクラスのことは全然知らなかったけど、あいつが敢えて友達を作っていないのは、理屈じゃないけど想像ができた．
「……ムラカミは、どこの高校に行くの？」
その時初めて、あいつの不安そうな声を聞いた。
中3になった夏あたりだっただろうか。俺はそのくらいに部活を引退して、たしかに受験のことを考えだしていたかもしれない。
「あー、谷坂かな。近いしサッカー部まあまあ強いし、偏差値もちょうどええから」
「……じゃあ私も谷坂にしよかな」
「は？お前やったらもっと上狙えるやろ」
普通の公立中学から、学区の中で一番頭のいい高校へ進学する人が出たとしたら、先生も、卒業生も、後輩も、Aの親だってきっと喜ぶと思った。
俺はそれがあいつにとって最善だと思ってたし、なんなら、あいつはもちろんそうする気だと思ってた。
「だってムラカミがいなきゃつまんないじゃん」
「なんやねん、どうせ今やって学校で話さないやないか」
黙ってしまったあいつをシカトして、俺は手元にあった自分の答案に目をやる。どの科目もあいつより下で、笑えてしまう。
「何、A」
「は？」
「同じ高校行きたいんか、俺と」
「っ………意味わかんない」
大きな目で俺を睨むその顔はいつもより赤くて、なんだか可愛いと思った。
今から猛勉強したら、どれだけランクを上げられるかな、と頭の中で考えていた。
「毎日死ぬほど勉強したら、間に合うかな」
「え？」
「手伝ってくれるか？」
「……うん」
あいつは自分ができるだけじゃなく教えるのもなかなかうまくて、手取り足取り指導され、
放課後の勉強会は図書館が閉まるギリギリまで続いた。
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作者名：猫彦 | 作成日時：2021年2月20日 11時
