DUSTBOX0.0 (ページ23)

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アンバー　6 ページ23

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次の日も、その次の日も
わたしは彼の部屋に向かった。

むっとするほど甘い香りのこの部屋にも、少しずつ慣れてきて、わたしと隆平くんは二人でテレビを見たり、わたしが宿題をやったり、暑さに負けてうたた寝をしたりする。

隆平くんの匂いのするクッションを抱いて目を閉じると、まるで彼と抱き合っているような気がした。

「隆平くん」

「んー…？」

眠たそうな声で、顔を腕に埋めながらわたしを見る。ちらと前髪の隙間から覗く瞳を一度見たら、わたしは石にされてしまいそうだった。

「隆平くん、わたしのこと、好き？」

「どうしたん、突然やなぁ」

隆平くんはわたしに触らない。どんなに近くにいても、彼の体温を知らない。彼がわたしに触れようとしたのは、スカートを下ろそうとしたあの時だけだった。

触って欲しかった。怖かった。わたしには女性としての魅力がないと、隆平くんに思われるのが嫌だった。

だけどわたしは未だ子供のままだった。
身長もさほど変わらず、身体つきも滑稽だった。

「ねえ、好き？嫌い……？」

鼻の奥がつん、とした。隆平くんが答えてくれない。嫌われているからだろうか。泣きそうだった。

ぎゅっと目を閉じたら、涙が一粒だけ溢れてしまって、それを拭おうと右手を顔に動かす。

いつもゆっくりだったのは彼の方なのに、

「………」

わたしの右手は彼に制され

あたたかい

彼が初めてわたしに触れた。

溢れた涙を掬い取るように、大きな手が、わたしに触れた。

あたたかくて、湿っていて。

そこに彼は生きていた。

甘い部屋で、たしかにそこに在る。

「すき………」

私の口から漏れた言葉は、熱い彼に届いたのだろうか。

「……嫌がらないと、あかんやん」

彼の顔がわたしの顔のそばにあった。あたたかい吐息が鼻をくすぐる。

「だって……」

だって

「…好きなんだもん………」

そっと触れた彼の唇は柔らかくて、しっとりとしていた。

彼の熱い体に寄りかかって寝たふりをした。

これ以上の幸せはないかもしれない。

甘い香り。ほのかに霞むわたしと隆平くんの汗の匂い。

なんだかそれが、夢みたいな幸せと
最上級の現実を教えてくれている気がする。

放課後も、夏休みに入ってからも
足繁くこの部屋に通った。

二人でアイスを食べたり、昼寝をしたりした。

わたしがキスをねだり、
彼はじっとりとそれに応えた。

部屋のふすまは開かないままで。
そんなものはわたしには見えていなかった。