忘れた頃に白い部屋＿2【ハイキュー!!】

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しばらく沈黙が続いたと思う

しばらくというか、数十分くらいは






知らない人、大して関わりのない人との間で流れる静寂は本当に地獄に行った気分になる


声を出せば上擦るし、変な咳払いしかできないし




私のコミュ力を最大限に湧かせようとしたが無理でした

そもそもコミュ力なんてなかったよね





どうしよう〜、1時間とか無理〜〜〜〜


と心の中で親しむ気概のない自分に打ちのめされていると、少し地を這うように低く響かせた声が届いた



間違いなく木葉さんの声





「……早瀬ちゃんって、……一目惚れしたことある？」



「え…一目惚れ………？記憶の限りないですね。
そもそも好きな人が居たことすら珍しいので」



「へぇ、早瀬ちゃんなら恋愛で苦労しないと思ってた」



「どういう意味すか」



「ふふ、そんな顔すんなって〜。ちゃんと褒めてるよ」





恋愛で苦労しないって褒め言葉に含まれるの

いやまぁ触れるところそこじゃないんだとは思いますけどね





繋がれた手首をもう片手で摩った木葉さんは、目を伏せて口を開いた





「じゃあ一目惚れって信じる？」



「この人も横顔美人じゃねぇか」



「え？」



「あ」



「え？」





えっと、なんて言ってたっけ


やべぇだめだ、白ヤギさん状態になってる
さっきの手紙のご用事なぁに





「えっと……なんでしたっけ」



「んーとね、…一目惚れって信じる？」



「………えー…。
……まぁでも、ある人はあるんじゃないですかね」





なににしろ一目惚れを疑うわけにもいかないだろ




ていうかなんて会話してんだよ


時間感覚掴めなくて狂ってるのかな、たった1時間が死ぬほど長く思えるよ





そうか〜とため息混じりに囁いた木葉さんはそれきり黙り込んでしまう


どことなく話しかけてはいけないという雰囲気を纏う木葉さんに話しかけることはできず、ただ沈黙の時間が流れた






刹那、ビビビビビッ、とけたたましい音が鳴り響き渡った



どうやら1時間が経ったらしい






繋がっていた手錠は鍵が外れ、手首の自由が取り戻された


当然出口も見えている





「…う〜ん…………出ましょうか」



「あ、うん……。
……ねぇ、あのさ」



「はい？」







 









「俺、今日初めて一目惚れした」






 







 






 



 





 


 







 
「(……何言ってんだよ俺ぇぇぇぇ……！！)」




＿＿＿木葉秋紀『手錠で繋がれたまま1時間経過』


 

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