ケンカ_17 ページ17
それからというもの。あの女は今まで以上に俺に近づいてくるようになった。香水の匂いが臭い。
「どうすっかな……」
呟いてみるものの、誰がどうこうできるようなものではない。いっそ、不登校になるという手もある。それじゃあAに会えない。
周りを見渡し、あの女が近付いてくるのを確認する。俺はその瞬間に立ち上がり、理由をつけて教室の外へ出た。
「屋上行くか」
理由が理由だったから弁当は持っていないけど、命に代えても行くと言ったので、屋上へと急いだ。
屋上の扉を開けると、みんな、賑やかにしている。
一番最初に気付いたのは、旦那だった。
「よォ、総一郎くん」
「総悟です」
「総悟! 遅い!」
「悪ィ」
「……で? 巻いたんじゃなかったの?」
Aが顔を歪めて俺の後ろを指差す。後ろを向くと、あの女がいた。
「総悟くん、酷い……。嘘吐くなんて……」
挙げ句の果てに嘘泣きをし出した。体が、震えた。女子、怖ェ……。
女のほうをずっと見ていると、後ろから腕を引かれた。
「総悟、銀さんの後ろいて」
「……おう」
俺が素直に従ったのは、Aが本気で怒っていたから。声のトーン、目付き、顔。全てに於いて、怒っていた。
「おぉ、怒ってんな」
「……旦那、不謹慎ですぜ」
「えー? 面白いじゃん」
「……」
とりあえず旦那は置いておいて、Aを見守ることにした。
「……あんた、本当に迷惑なんだけど」
「そちらこそ迷惑ですよ。総悟くんに付きまとって」
「付きまとってんのはあんただから。もしかして、脳内お花畑だったりするの?」
「あなたに言われたくないんですけどぉ。総悟くんの彼女って言い張ってる人ですよね? 総悟くん、困ってるんで止めてもらってもいいですか?」
「は? 彼女なのは本当だから。性格ぶすは嫌われるよ?」
「性格がぶすなのはあなたでしょぉ? てゆーか、彼女って証拠はあるの?」
「幼馴染み兼彼女です。正真正銘彼女です」
「ふーん。じゃあ総悟くんの好きなものわかるのね?」
「分かるよ。あんたこそ分かるの?」
「分かるよぉ。総悟くんの好きなものは、漫才でしょ?」
「……残念。総悟の好きなものは漫才じゃなくて、落語だよ。それと、」
Aが俺のほうを見る。なんとなく言おうとしてることは分かる。
A、言ってやれ。
「私だ、ばーか」
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:廉火 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Konatu0602/
作成日時:2018年4月16日 2時