振られた【三ツ谷隆】

24：思い出は色褪せず ページ26

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チクタクと、時計の針が動く音だけが聞こえて


気まずさがなくなってくれない。




本当なら話題とかを探して会話を続けるべきなんだろうけどそういう訳にもいかないから。







……なんか、こうしてると隆と出会ったときのことを思い出すな。









二年生になりたての春、体力測定の日。









『いったぁ……足捻った……』





最初の競技、100m走。





近頃運動していなかったからか、ちょっと走っただけで足を捻ってしまった。






「酷くなるといけないし、保健室行ってきなさいな」


『はい……』





体育の先生に促されて保健室に向かう。




捻挫とかになってないといいけど……松葉杖とかごめんだ。







『……あれ、誰もいない？』






あ、紙置いてある。職員室にいるのか……





呼びに行くためにはまた歩かないといけない。でも足が痛すぎるんだよなぁ……




……待っとこ。





近くに置いてあった白いシーツの敷いてあるベットに腰を下ろす。





……あ、窓が開いてる。ここからの桜は凄く綺麗に見えるなぁ……






ぼんやりと桜を見つめていたとき、聞きなれない声が聞こえた。






「……あれ、先生いねぇのか」






入口付近に立つ、銀髪の男の子。



あ、この人見たことある。不良の人だ。






「しかも先客いんじゃん」





え、待ってこっちに来るの？？？





コツコツと上靴の音が近づいて、私の前でピタリと止まる。






『……えっと、いいお天気ですね…？』






うん、何言ってんの私。いくら不良が怖いからって最初の言葉がそれは無いでしょ…


すると男の子も同じことを考えていたらしく笑い始める。






「ふはっ、なんだよそれ……あぁ、いい天気だな。暖かくて」






バカにするのかと思ったけど私に話を合わせてくれる。優しい人だ。







「んで、オマエはどこ怪我したんだよ」


『足をちょっと捻って……』


「ふーん……ちょっと見せてくれ」






そう言って私の足を優しく持ち上げて足首辺りをまじまじと見つめる。



そんなに見ないで欲しいんだけどな……






「ここ、痛いか？」




彼がゆっくり足首をぐっと押した。






『ちょっぴり、痛い』


「ん、なら氷でとりあえず冷やしとくか」







……なんだか、本当の保健室の先生みたいだなって。それが彼の第一印象だった。

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