君たちは私を見てくれない【東卍】

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真一郎side







あれから、あの子と話す機会が増えた。


家の前はあれだからいつも近くの公園のベンチで話す。




俺はもう死んでるからベンチには触れられない。それは死んでないこの子も一緒だ。

まるでベンチに座る素振りをして、浮いているだけ。






それでもこの子は、自分はベンチに座っていると信じているんだろうな。









最近、警戒心が解けたのかアイツらの話をするようになった。





仲良かった奴らが目を合わせてくれないこと、悪い事をしたなら叱って欲しかったということ。


それから……記憶がないということ。




何となく納得がいった。彼女がこうなった原因を忘れているなら、これを本当の自分だと思い込むのも無理はない。




彼女は言った。



記憶がないなんて言い訳にしか聞こえないかもしれない。それでもいいから私の話を聞いて欲しかった。と……






目を合わせてくれないのも、叱ってくれないのも、話を聞いてくれないのも…当たり前ではある。


きっと、本当ならそうしたいはずだ。



でも、したくても出来ない。





だって君は、俺以外には見えてないんだから。






そんなことを言える訳もなく、彼女に合わせて話をする。









「……記憶がない、か……多分、君は何かを認めたくなくて無理矢理記憶を消してるんじゃないかな」






『無理矢理記憶を…？』





「そ、信じたくないことがあって、まるで何も無かったかのように過ごしたいという気持ちが今の君の状況を作り出してるのかも」









直接じゃなくても、間接的に教えてあげることは出来る。


なんでこんなことしてるのか俺自身分からない。



放っておけばいいのにな。なんでだろうな。









ただ……彼女の悲しい顔をこれ以上見たくなかった。

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