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28話 ページ28

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好きだとか、触れたいだとか。そういう感情を口にするには私達の中には何かが欠けていて、その隙間は簡単には埋まらない。ツギハギなものでもいい、ただ必死に繋ぎ止めていたかった。

でも、不器用な私達はいつだって愛をぶつけ合っている。
信じるのが怖くても、そう思えるようになったのはきっと随分前のことだ。



「....手、離さないで」

『ぅ、ん....』



遠くで秒針を刻む時計の反響した音が、脳内まで侵食する彼の声ひとつで消し去っていく。呼吸すらも許さないような口付けが私の心をぐちゃぐちゃに掻き乱しては、頬に雫が染みるのが分かった。何度も絡み合った指先が熱くて、全身が溶けてしまいそうで。
誰にも言えない幸福を手放すのは、いつにも増してどうしようもなく恐ろしかった。

好き、大好き。愛してる。
本当だよ、嘘じゃないの....心の底から、貴方だけを愛してる。

たとえどんなに後ろ指を刺されても、何を敵に回しても。この気持ちだけは一生変わらない。隣でずっと貴方が生きていく姿を見ていたい。
たったそれだけの想いを、ただひたすらにこの熱に溶かして。



『も、もっと、ぎゅってして....』

「....そんな顔しないでくれ、何かと狡いんだよ君は....」



固く握られていた手が解かれ、代わりに強く体を引き寄せられる。これ以上近づきようもなかった距離が、より密着しては耳にざわめく鼓動がより激しくなった。お互いの音が混じり合って、もうどちらのものかも分からない。ただ、今の心境だけは何を問わずとも理解できる。

踏み込んではいけない一線は鮮明になって、少しでも手を伸ばせば触れてしまうことを彼の胸の中で実感していく。膨れ上がっては弾け飛んでしまいそうな自身の理性が、私の意地とは裏腹にうるさく喚いていた。
後戻りのできない関係にだけはなりたくない。直感で理解してしまっているんだ、それを越えたらもう二度と夏油の胸の中には戻れないと。

私達を繋ぐ"縛り"は、一種の呪いなのだ。
愛ほどこの世で最も尊くて残酷な呪いはない。

終わりの見えないこの関係を一時の幸せで壊す勇気なんて、あるわけないの。



『お願い、ずっとこのまま....』

「....分かってるさ。夜が明けても、離さないから....」



"ごめんね"と、か細い声がする。
何かが胸に込み上げて目元が熱くなっても、もう顔を合わせられなかった。

どんな言葉も要らないの。ずっと触れて、愛していて。
愛の形はひとつじゃないと、どうか証明してみせて。

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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時

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