13話 ページ13
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定期を買ってからというもの、任務の無い日はあの部屋に足を運ぶようになった。吸い込まれるかのように、けれど、確実に自身の意思で。
玄関の戸を引けば当たり前のように彼に出迎えられ、ほだらかな微笑みに誘われて畳と布地が擦れていく。
相変わらずな態度で、"来たくて来たわけじゃない"なんて無理のある言い訳の羅列を繰り返す。
想いを口にしない。絶対素直にはならない。
それがこの逢い引きを繋ぎ留める条件だと、いつしか確信に変わっていった。
＿＿＿＿ある、例外を除いて。
『＿＿＿も、これで最後....』
「悪いが、まだ物足りないな」
『ぇ、傑....っ』
会う度に、私達は必ず口付けを求めた。この瞬間、この時間だけは、何に阻まれることもなく。
私達は欲のままに唇を奪い合い、この瞬間だけは"傑"と、彼の名を呼んだ。
けれど一切として好意を口にすることはない。愛の言葉だけは、御法度だった。それを破れば、この関係は成り立たなくなるから。お互いに理解していたから一線を超えることもなく深いキスだけを、繰り返していた。
誰に言われたわけでもない。ただ繰り返す度に、私達の間でそれが確立していっただけ。暗黙の了解が、増えただけ。
....この限られた時間が過ぎ去れば、私達は何事も無かったフリをして互いに心の距離を置く。また冷たい態度で"夏油"と名を呼ぶ。
キスについて言及することは一切せず、素直にもならずに。
それが許されるのは、唇触れ合ったときだけなのだから。恋愛感情が滲むのは、そのときだけ。
言葉にせずとも、少しずつ彼の本音は汲み取れるようになっていた。でないと毎回口付けなんて交わさないから。
夏油が毎日あの部屋へ通う理由がただ一つに定まっても、内心歓喜に溢れた自分がいるとしても。
絶対にそれを外に溢れ出してはいけない。気づかないフリを、永遠にし続けなければいけない。
勿論、お互いに。
それが、私達が繋がり続ける為に選んだ縛りだった。
＊
「いつまでも物好きだね。さっさとここを報告すれば君の株も上がるかもしれないのに」
『他人からの好感度なんていらない。夏油だって、さっさとその家族とやらに言いつけて追い出せばいいのに』
「君が新鮮な呪霊を届けてくれるからね」
『私は野菜農家じゃない』
両手が埋まるほど会い続けても、私達の関係は何一つ変化を起こさない。でもそれでよかった、そうでないといけなかった。
また、取り繕ったような一日が過ぎていくとしても。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
