15:バカと青い春 ページ15
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『あ、顎クイは、好きな人にやりなよ』
「そんなキスする訳でもないのに、うぶだね」
『お前の度が過ぎるんだよ気づけバカ』
そうは言っても聞かないで有名なこの男、夏油傑。
神妙な雰囲気の中、優しく私の顎に指を添え、熟知しているかのように顎を持っていかれる。
しかし、遠くから少しずつ大きくなる足音にも気づいていた。
軋む音が止み、やがて2メートルほど離れた角から硝子が顔を出した。でも五条の姿は見当たらない。
いや、それでもこの状況からは助けてもらえる。傑だって遊び10割でこんなことをしているだけで、周りの反応が見たいだけなのだ。
....けれど、「青春取り戻そう大会」においてはまた別の話だったらしく。
「え、なにキスする?すまん私邪魔だった戻るわ」
『違っ、もうかれこれ顎クイされて1分は経ってるわけ!私遊ばれてるの見て分かるじゃん?』
「夏油の真剣な眼差しが上手すぎてウケるし騙されるクオリティしてるけど」
そう言われた本人と目を合わせてみる。
確かにコイツ、ほんの少しだけ頬を緩めてじっと目を逸らそうともしない。
なんだ、ただの女誑しか。
「あれ、ちょっと耳赤くなってるよ。キスされるかもって想像でもしたかい?」
『無理やり私をラブコメ世界に連れていかないでくれるかな。誰だって恥ずかしいでしょこんなの』
そう言うとすんなりと傑は離れた。
やっぱり、というか絶対誰かにこの姿を見てほしかっただけだ。私で遊びすぎだろ。
「さてと....あんなに意気込んでいた悟がいないね。とりあえず戻ろうか」
そんな一言に丸く収められ、私も硝子も肩を並べて来た道を戻り始める。
足音と軋む音の僅かなズレが、なんだか1番青春を感じさせてくれるものなんじゃないかなと、我ながらエモいことに気づき口にしようとしたときのことだ。
またしても腕が掴まれ足を止められる。嫌な予感だけが押し寄せてくる中、振り返ると目を輝かせた悟がそこに居た。
硝子も傑も特に声はあげずに、「なんだそんなところにいたのか」と言わんばかりの表情。
お次はなんなんだ、と青春というワードを色んな物事に直結させ思考を巡らせてみる。
しかし悟はお坊ちゃん。それを忘れてはいけなかった。
「Aみっけ。ほら来い、俺とどっちが先に東京一周できるか勝負な!!」
『マジかよお前っ』
私の青春が違う意味で桁違いになってる気がする。
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むぎ(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます💦先日の投稿の際に誤って立ててしまったようです、ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません💦 (2023年3月28日 8時) (レス) id: 20f0e797ef (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - オリ‘フラ立ってますよ!二次創作の作者には、オリ‘フラを立てることは出来ないので気をつけて下さい💦 (2023年3月28日 8時) (レス) id: d16c4af477 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 設定から面白いし続きがめっちゃ気になります! 更新ありがとうございますm(_ _)m (2023年3月27日 0時) (レス) id: d9289f95ee (このIDを非表示/違反報告)
焼き鮭(プロフ) - 凄く面白いです!更新頑張ってください! (2023年3月25日 17時) (レス) @page2 id: 64769613b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2023年3月25日 16時