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ibuki
現場は、都内のビル1階のコンビニ。
「被害者は腹部を1度刺され、大量出血。刺し所が悪く動脈損傷があるみたいです。ショック状態で会話は無理でした」
救急隊に確認を取って戻ってきたAちゃんはぺらりとメモをめくる。
コンビニの入り口をペンライトで照らせば、痛々しい血痕が目立つ。
どうやら被害者がコンビニから出てきたところで犯行が起こったらしい。
凶器は刃物。現場には落ちていない。
そして、犯人は逃げた。
「名前は早川シュンさん、19歳。このビルの隣のシェアハウスに住んでるそうです」
「……シェアハウスねぇ、管理人さんに連絡しようか」
志摩が建物の名前を確認しようと動いたとき、慌ててAちゃんは志摩さん志摩さん、と呼び留めた。
「さっき連絡しました、今向かってるそうです。到着まで5分くらい」
「おお、Aちゃんやっるう!」
へへ、と少し鼻の下を伸ばす彼女。だいぶ機捜の捜査にも慣れてきたみたいだ。
「凶器を持って犯人は逃げてるってことですよね」
「捨ててなければそうだな。Aさんはどんな人が犯人だと考える?」
窺うような目で志摩は尋ねる。この聞き方、志摩ちゃんはもう粗方予想はついてるんだな。
「ええと」
彼女は現場をぐるりと見まわし、入り口付近をウロチョロしてから俺ら2人の元へ戻ってきた。
うーん、と少し口をとがらせながら推理を述べ始める。
「腹部の刺し傷は、体の背面ではなく正面からでした。つまり、被害者と犯人は向き合った状態で事件は起こった」
彼女は自分の背中を触ったりお腹を触ったり、身振り手振りが多い。
大きな目はしっかりと見開かれていて、全身全霊で考えているのが見ていて伝わってくる。
「出入り口ですれ違う瞬間って、赤の他人とわざわざ向き合うっていうのは考えにくいかと。顔見知りの犯行だと思います」
どうですか?と言わんばかりに、Aちゃんは志摩と俺を不安そうな表情で見つめる。
唇を噛んで上目遣いな様子からは自信無いにおいがプンプン。
少し溜めてから「俺も同感だ」と志摩ちゃんが言った瞬間、彼女の表情筋がふっと緩んだ。
「じゃあ次はどうする?」
「志摩ちゃーん、Aちゃんは捜査対象じゃないでしょー」
「ああ、ごめんごめん。失礼」
次から次へと追いつめるような志摩にストップをかける。
わざとじゃないんだ、とちょっぴり怯えるAちゃんに彼はペロリと舌を出し、悪戯気に笑った。
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ココロ(プロフ) - みずえさん» コメントありがとうございます!!2で彼女たちの過去が明らかになっていくので楽しみにしていただけると嬉しいです!!よろしくお願いしますo(^-^)o (2020年9月5日 21時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
みずえ - いつも楽しく読ませてもらっています。夢主と志摩さんの関わりが好きです!2も楽しみにしてます! (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8f8fdf8959 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぽんきちさん» コメントありがとうございます(*^o^*)楽しみと言っていただけて嬉しい限りです!!少しずつ明かされていくと思うので、不定期だとは思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*^o^*) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんきち(プロフ) - お話の序盤であった志摩との過去の関係や、夢主の推薦研修の件など色々と明らかになっていくのが楽しみです!!これからも更新楽しみにしています! (2020年8月19日 22時) (レス) id: 60a8b99502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kokoro | 作成日時:2020年8月11日 17時