Ninety “Stolz” 復讐鬼side ページ20
幹部全員の神妙な顔は、変わることはなかった。
…女だからといって認めてもらえないことがAにとってはやはり辛いものだろう。
だが、俺たちにはどうすることもできなかった。頭の良いグルちゃんやマンちゃんでも。
オ「……」
幹部全員が完全に兵士に背を向けて、高台から去ろうとした時。
・
『すみません。もう少し時間を頂いてもよろしいでしょうか?』
・
中性的な声色が、所々に配置されているスピーカーと背後から聞こえてきた。
A以外「っ!!!?(A!!?)」
声にならない驚きと共に、バッ!と俺らは勢いよく振り返る。一体何を言いだすのだ…
ざわついていた広場内は、一瞬にしてまた静まり返る。それは、幹部も兵士も平等に。
先ほどまで気づいていなかった。
忘れていたんだ。Aがまだ、演説台の近くにいたことに。
『その場で結構ですので、耳を傾けてくださると幸いです。』
ト「お前…(はあ…)」
トンちゃんも、勝手な行動に溜息をついて怒ろうとしていたが、困ったように笑うだけで留めていた。
緊張も不安も焦りも感じないその穏やかな声色に、俺は酷く安心し、脱力しそうになる体を必死に抑えた。
否、それは幹部のみんなも一緒だった。
『出来るだけ手短に済ますように努力します。…単刀直入に申しますと、皆さんはこの幹部昇格に納得していらっしゃらないことでしょう。』
綺麗な謙譲語。やはり東洋の血が混ざっていることを実感する瞬間でもあった。
彼女の声だけが、広場内を通り抜けていく。
『「何で訓練で鍛えている自分たちからじゃなく、何でこんなに細くてか弱そうな女を幹部にするんだ」と腹がたつことかと思います。』
『私は実際に見たわけではないので、どのように努力して来たのは知りません。ですが、過酷な訓練を受け続けて来たというのは存じております。』
彼女の顔は、真っ直ぐに兵士達の目を見ていた。
『その努力を嘲笑うかのような、幹部への昇格…それも女ときました。…それは、私でも腹がたつことでしょう。』
『男性というのは、自分の命より“プライド”のために尽くすものです。ここにいる方々は、大体がその方達で沢山です。そんな中で命より重いプライドを傷つけられることは、非常に悔しい筈です。』
そこで一旦言い終わると、Aは愉しそうにくすりと笑った。
『なら…』と言葉をつなげていく白いパーカー。
Stolz プライド
Ninety One “Provokation” 復讐鬼side→←Eighty Nine “Unglück” 復讐鬼side
292人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SAKURA(プロフ) - KZファンさん» 励ましのお言葉有難う御座います!!受験生辛たん…。 (2018年12月31日 12時) (レス) id: 93ee48c149 (このIDを非表示/違反報告)
KZファン - こんにちは!受験生なのに大変ですね?私もついつい、毎日、見に来てしまいます。頑張ってください。 (2018年12月31日 12時) (レス) id: 7d84edeee2 (このIDを非表示/違反報告)
SAKURA(プロフ) - ゼロさん» お互い大変ですね…^_^;更新も受験も頑張ります!ゼロさんも受験頑張ってください! (2018年12月24日 20時) (レス) id: 93ee48c149 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - 受験大変ですね。実は私も今年受験なんです。それでもつい毎日この小説チェックしてしまいます(>_<) これからも頑張ってください! (2018年12月24日 19時) (レス) id: 3abbab8517 (このIDを非表示/違反報告)
SAKURA(プロフ) - 夏目さん» あ、ありがとうございますぅ…(´;ω;`)これからも宜しくお願い致します^_^ (2018年12月24日 16時) (レス) id: 93ee48c149 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:SAKURA | 作成日時:2018年11月29日 3時