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38*昔噺をいたしましょう。2 ページ39

零さんに出来たばかりのUNDEADのプロデュースを依頼されて、しばらくは一緒に活動していた。
五奇人の一人ってだけで注目を集め、名を轟かせるのはあっという間だった。


夏が過ぎて秋が来て、零さん達の側にいるのは変わらず。


『あ、お兄ちゃん…「ゆうくーん!」』

「げっ、泉さん…」

「あからさまに嫌そうな顔なんてお兄ちゃん傷付いちゃうなぁ」


最近になりゆうくんに異様に執着し始めたのを見て、昔から知り合いだからかな…って思った。

最近になり私に対してキツイ物言い、うざがられる回数が増えた。




「にゃんこ〜我輩喉が渇いた。
一緒にトマトジュースでも、飲まんか。」


しばらく共に過ごせば零さんの印象も怖い人から、優しくて何だか可愛い人だと変わっていた。
実際気遣いもできて、温厚で、既に存分に気を許していたのだから。





「…にゃんこがしているのは叶わぬ恋と言うやつじゃのう。」


ハッとした。振り返れば全てを見透かすような赤い色に身体中の血液が沸騰しそうな程に熱くなっていく。



『なに…を、言っているんですか…?』


「この学院の事ならなんでもしっておるぞ。
まだ燻っているが綺羅星の存在も、帰還する王のために古城を守り続けている騎士のことも…

実の兄に恋している可哀想な子猫のこともな。」



目を開いたままなにも言い返せなかった。
誰にも話したことない、誰にも話せない、誰にも話しちゃいけない【醜い恋慕】を。

バレないように気を付けていた。

バレたところで好奇に晒され、誰も幸せになんてしないことも知っていた。



「誰かに流布すつもりなんてないから安心せい。
しかし我輩はにゃんこが難儀で仕方ないのう。
こんなにも愛くるしいのに、向けられることのない愛を望んでいるにゃんこがなぁ。」


『…向けられなくてもいい、んです…
側に居れれば。』


「相変わらず加護欲を引き立てるものだから困ったものじゃ。
…ふむ、我輩と付き合わぬか?」


『…私、零さんのことは…尊敬してますが、その…』


「好きではないのは承知の上だ。
泉くんの代わりになって、全力で愛でてやる。
忘れさせようとは思わねぇが、俺の側にいろ。」



濃く赤い瞳…いつか遠くで見ていた朔間零が目の前にいて、もしかしたらこの醜い恋慕を捨てられるかもしれない。
浅はかな考えのまま逃げるために、首を縦にふった。

39*甘くて苦いチョコレート→←37*昔噺をいたしましょう。1



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モカ(プロフ) - 架月*さん» コメントありがとうございます!初めてこのお話にコメントが来たっ…!!非常に嬉しいです。更新頑張りますね。 (2017年6月23日 21時) (レス) id: efb045d001 (このIDを非表示/違反報告)
架月*(プロフ) - あとがきとあり、ここで終わってしまうのかと思ったのですが、続編と聞いてワクワクしてます!頑張って下さい! (2017年6月23日 21時) (レス) id: 6bbbbd55e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:モカ | 作成日時:2017年6月9日 6時

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