貴方の壊れた部品、直します (ページ5)

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思い出せなくて④ ページ5

「んー、じゃあ、やりますかねぇ」

霧島さんはぐーっと伸びをし、気だるそうに言う。私は先程とは違う、倉庫のような場所に案内された。周りを見回していると、霧島さんがこちらを向き、真剣な面持ちで話しかけてくる。

「おいお前。えーっと…沙紀だったか。沙紀は交通事故のはずみで記憶を失くしたんだよな」

「はい、そうです」

「覚えてること、なんでもいい。断片的でもいいから教えてくれ。」

「覚えてること……。」

言われてみて改めて考えてみる。私が病院のベッドにいる前……。前…。頭の奥底で何かが光るような感じがした。私はふと思い出す。

「そういえば、車に轢かれる前、何か見たような気がします」

「何を見た？」

「暗くて悲しい表情をした…女の子。」

「……はぁん。またあいつらかよ。めんどくせーことしやがってよ……。」

「あ、あの……？」

霧島さんがドンドン不機嫌になって行くのを見かねて、私は声をかける。"あいつら"って誰のことだろう？私が首を傾げていると、霧島さんはあぁ、と言って笑った。

「悪ぃ。なんでもねぇ。…んじゃま、修理するからちっとこれ、飲んでくれ。」

「……？これは？」

渡されたのは小さなカップ。その中にはトマトジュースのような赤々とした飲み物のようなものが入っていた。霧島さんは苦い顔で答える。

「あんま言いたくねぇんだけど。治療に必要な飲み物とだけ言っておく。早く飲め」

言われたとおりに目を瞑ってゴクリ、と飲む。以外にも味は美味しく、まるで海にいるような心地になった。

わぁっと、声を出し目を開けるとそこは、海の底のような場所だった。さっきの倉庫とは大違いだった。私は慌てて周りを見渡す。不思議と息は苦しくない。

その場にいても仕方ないので、海底を歩いてみる。水の抵抗を感じつつ前に進んでいると、奥に小さな人影が見えた。あれは……

「…"僕"……？」

それに隣にはあの美澪もそこにいた。私が駆け寄り、思わず手を伸ばすとすかっと空振りしてしまう。どうやら相手には見えてないようで、触れないようで。

2人は笑顔でベンチに座り、話していた。歩きだし、大通りの交差点に差し掛かった時だった。急にトラックがぱぁっと大きくクラクションを鳴らし近付いてくる。目の前スレスレを通りかけた次の瞬間。後ろから誰かに突き飛ばされた。

突き飛ばされた私が、目を見開いて後ろを向く。私も彼女の見てる方に視線を移動させると。

ー口の端を引き上げて笑う、美澪の姿があったー