あなただけが好きな人。【橙】

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｢わぁ、Aちゃん制服やん！やっぱ女子高生はええよなぁ、お兄さん若返るぅってな！｣
「…………」


これはどう反応すればいいのかな。


｢あっ、関西弁｣


こーじさんさっきまで標準語だったのに関西弁に戻ってる。
私が不思議そうな顔をすると、こーじさんはニカッと白い歯を見せた。


｢さすがに仕事で関西弁はイメージ悪いってか、信用度が半減する言われてな。意外と苦労もんなのよ｣
｢そうなんですか。大人って大変なんだね｣


生まれもって使い慣れた方言を使えないってのは、私が想像する以上に大変じゃないかなって思う。


｢ほな、行こか｣
｢何処に行くの？｣
｢ええとこや｣


伝票を持ったこーじさんは、意味深に笑顔を見せレジに向かった。

あれ？

後を追いかけると、私しか注文していない伝票を会計してしまう。


｢ちょっと待って下さい！｣
｢ん、なんや？｣


グイッと腕を掴むと、掴まれてない方の手で財布をズボンのポケットに仕舞う。






仕舞われた財布とこーじさんの顔を交互に見る。
首の上下運動しんど………じゃないっ！！


｢払うよ！！｣
｢ええ、ええ｣


それって“いらない”てことなんだろうけど、そういうわけにもと言葉を濁す私の頭にこーじさんの大きな手が乗った。
ちょっとズシッとする。


｢待たせた詫びやから気にせんでええ」
｢う〜っ｣


奢ってもらう経験があまりないから、どう対応したらいいのかわからない。
困っていると、こーじさんが背を屈め人差し指を立たせた。


｢こういう時は“ありがとう”って可愛く笑ってたらええんやで｣
｢あ、ありがとうございます？｣


と、ぎこちない笑顔。
それでもこーじさんは、優しくウンウンと頷き頭を撫でてくれた。


｢ええ子やな｣


歩き出したこーじさんのちょっと後ろを着いていく。
撫でられた頭にポンッと手を置いて、くすぐったさにふにゃっと頬が落ちた。

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