キズナ【イナズマイレブン】 (ページ9)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:15,411 hit

トモダチ09 ページ9

「私だって……いえ、私だけじゃない。みんながあなたのことを大切に思っているの。だから……リュウジと同じことを言うようだけれど…いつでも、私たちを頼ってほしいの」

どこかしんなりとした雰囲気が辺りを包むが、玲名に語りかけられているAはついに「みんなどうしたの？」と声を発した。玲名は目を瞬かせると

「ほら、A、最近ため息ばっかりついてたじゃない。それで…」

と言う。Aは「ああ……」と納得したように呟き2度瞬きをすると、口を開きかけたが何も言わずに閉じて視線を彷徨わせる。玲名は訝しむように「A？」と顔を覗き込む。彼女はあー、だのうー、だの唸っていたが観念したように喋り出す。

「その、ね？あの……ほら明後日さ……玲名の誕生日じゃん？それで、プレゼント何にしようかなーって迷ってて……」

面食らったような顔をしている玲名を気にするようにチラチラと盗み見るA。玲名は呆れたように、しかしどこか嬉しそうにため息をつく。

「まったくもう……Aからもらったものならなんでも嬉しいわよ？」

「聞いてもそう言うと思って聞かなかったの。というかそれが1番困るんだって……」

Aが膨らませた頬を両手で挟み空気を抜くと、くるりと振り向き自分たちの杞憂だったことを伝える。玲名の奥では相変わらず仲のいい男子4人が絡んでいた。ただし、風介とリュウジ、晴矢とタツヤという珍しい組み合わせで。

玲名が「帰るわよ」と一言言うとタツヤが先頭を行き、それに全員がぞろぞろとついていく。

その後ろ姿を見て、玲名は頼りになるお姉さん、タツヤはみんなをまとめるリーダー、リュウジはしっかり者だけどどこか抜けているところがあって、晴矢はいつでも元気いっぱいで、風介はいつも冷静沈着で仲間思いで……とみんなのいいところが不意に思い出される。

「(やだ、なんかみんなと離れ離れになる前兆みたいじゃん……そんなわけ、ないのに)」
なんだか悲しくなってきてしまい立ち止まっていると、やはり最初に気づいたのは玲名で「どうしたの？」と聞いてくる。その声で全員後ろを振り向き、心配そうにこちらを見つめる。

そんな最高の友達に、Aは満面の笑みで「ううん、なんでもない！」と答えた。

彼女につられてみんなが微笑む。日が傾きオレンジ色に染まった空を背景にしたその光景は、Aの記憶にしっかりと刻み込まれた。

ーENDー