キズナ【イナズマイレブン】 (ページ13)

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ナカマ04 ページ13

試合当日。Aは白恋中のユニフォームを着てグラウンドに立っていた。彼女が思った通り欠席は2人だけだったのだが、なぜかスターティングメンバーに選ばれたのだ。

観客の歓声に包まれるフィールドを見回すと士郎と目が合った。手を振られたのでとりあえず振り返しておいた。

目を瞑ると否が応でも、とある記憶が思い出される。

ーー「勝利の女神、AAがフィールドに降り立ちました！さあ、今回はどんなプレーを見せてくれるのでしょうか！」

ーー「今日も勝つ。頼んだぞ、“勝利の女神”」

「……ぁ」

手足が彼女の意思と関係なく震えだす。ただただ、その時も今も恐怖しか感じなかった。

「(私はAAじゃない。サッカー未経験の白兎屋A。大丈夫……大丈夫だから！あんな昔のこと、誰も覚えてないに決まってる)」

そう自分に言い聞かせて深呼吸をすれば、少しだけ震えが治まった。ーー実況が、聞こえてくるまでは。

「さあ、まもなく始まる中学校サッカー大会、準決勝、白恋中対雪ノ成中！白恋中はフットボールフロンティア本戦に出場した強豪校！一方の雪ノ成中は前回の本大会で優勝しています！………な、なんと！情報によると白恋中にあの伝説の“勝利の女神”が参戦しているようです！」

かつて、北海道にはチームを必ず勝利に導くことから“勝利の女神”と呼ばれていた天才少女がいた。その少女の名は、AA。彼女のプレーは観客を魅了し、そのあどけない笑顔に誰もが見惚れる。彼女は北海道から世界へと羽ばたき、その世界ですらも頂点に立った。

しかしその世界大会が終わった直後、彼女はサッカー界から姿を消した。その理由は、彼女が所属していたチームの人すらも知らなかった。

そんな伝説とも言える少女の復活を観れると観客がざわめき始め、白恋中のメンバーは困惑している。

「勝利の女神って……ウチにいたか？」

「いや……？あ、まさか……」

「「A先輩？」」

その呟きが聞こえたのか白恋中のメンバーの視線がAに集中する。彼女は信じられないといったふうに監督を凝視していたが当の本人はそっぽを向いて口笛を吹いていた。

少しして周りの視線に気づいたようで視線を彷徨わせながら髪をくるくると弄る。

「お前……どこがど素人なんだよ！」

「まあまあ、何か事情があるんだと思うし……ね、Aちゃん」

「あ……えっと……」