純-Ki-F-【2】

Ki01＊愛情表現＊ ページ36

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「ふう……」







なんとか間に合った。


ようやく新幹線に乗り込んで
指定の席に腰を下ろした。








監「北山くん、お疲れ様」


「いえ！監督もお疲れ様です！」








怒涛の舞台挨拶に、
俺も監督も疲れが見え始めていた。



ここ最近は、数え切れない雑誌撮影と
新曲の歌番組に映画のプロモーションと、
休む暇なく朝から晩まで働き詰めだ。




睡眠時間もろくに取れていないからか
少し頭がクラクラする。








監「大丈夫？ちょっと顔色悪いけど…」


「大丈夫です、ご心配おかけしてすみません」







監督の手前、そう言ったけれど
やっぱりちょっと燃料切れ。



今の状態で舞台に上がっても
良いコメントが出来るとは思えない。



駅に着いたら栄養ドリンクでも買って
気合い入れ直さなきゃな。




今は無理しなければいけない時。
踏ん張り時なんだ。
しっかりしろよ、俺。








「ん？」







あれ？

俺、間違って鞄に入れたのか？





俺の鞄にあるはずのない
見覚えのあるポーチ。




太輔がいつも常備薬を入れているポーチだ。




やべーな、無意識だわ。
やっぱ疲れてんのな、俺。





太輔、ポーチなくて困ってねーかな…

一応LINEしとくか。








と思った瞬間、スマホが震えた。

太輔からLINEだ。








太輔新幹線でポーチの中見てね!









まじかよ。あいつが入れたのか。

てゆーか、









「すげータイミング」


監「ん？どうしたの？」


「いえ、なんでも」









ククッと笑いを噛み殺しながら
ポーチの中身を確認する。






栄養ドリンクとともに手に取ったのは…









監「可愛いね」



「！？？」



監「ふふ、誰にも言わない言わない」



「あーー…、すんません」



監「なんで謝るのー。可愛いね、彼女」



「いや、そんなんじゃ…、」



監「照れない照れない」









不細工な猫のイラストと



『お疲れ様！
宏光の頑張り屋さんなところが好きだよ。
愛してるにゃーーーー！』



と書かれた小さなメモ。









慌ててメモをポーチにしまってLINEを返信する。

どうにも頬が緩むのを止められない。








宏光俺も愛してるにゃーーーーー









愛情表現豊かな恋人に癒されたところで。

さあ、残りの仕事も頑張っちゃいますかね。








Fin.

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