純-Ki-F-【2】

F03 ページ27

.







インドから帰国してから
北山はずっと体調が悪そうだった。



スタッフさんから聞いた話によると

あっちで食中毒と過労で倒れてしまったけれど
薬で騙し騙し、収録を進めていたようだった。





他のメンバーもその話を聞いて
インド滞在中は心配していたけど、

弟達は、北山が今も不調を抱えていることには
それほど気付いていないようだ。




.







北山は、本当にグループ想いなんだと思う。







.






いつでもまっすぐで
自分にもメンバーにも、すごく厳しい。



厳しくする、というのは
厳しくされる側の何倍も、負荷のかかることだ。






最年長としての責任感、なんだろうか。






今、グループにとって本当に大切な時期
ということもあるだろうけど、


いつも張りつめていて
ふとした拍子に壊れてしまうんじゃないか

…なんて、錯覚してしまうこともあった。







俺はまだまだ
自分のことでいっぱいいっぱいになりがちだから

そんな北山のことを
単純に凄いと思う反面、



どこか、言いようのない不安を感じていたんだ。







.








「…遅いな」





今日の様子だと
あいつ、一人で帰れない可能性あるだろうし。

だなんて、自分で自分に言い訳しながら
楽屋で一人、北山を待っていた。






「…長くないか？」






打合せってこんな長いのか？

やっぱり俺も参加するって言うべきだったかな…





メンバーが帰った後の
北山の荷物だけが残った楽屋で
スマホを弄りながら一人呟く。





あいつ、大丈夫か…？






なかなか戻ってこない北山に
少し不安になって、
思わず貧乏揺すりをしてしまう。






体調悪い時くらい
少しは頼ってくれたっていいのに…





なんでもかんでも抱え込みがちな相方。


そんなところが好きでもあり、
心配でもあった。






はあ…、と何度目かもわからない溜息が漏れる。









「飲み物でも買いに行くか」







気分を変えようと部屋を出て
自販機へと足を向けた。






.







.








あたたかいのと冷たいのと
どちらでも選べるように

二本の飲み物を手にして


楽屋の扉を開けると








.






「……北山っ！？」







.







うつ伏せで倒れている
シンメの姿が目に飛び込んできた。







.

F04→←Ki02

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す