純-Ki-F-【2】

Ki02 ページ26

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出すもんなんかもうなんもねーのに
胃がひっくり返りそうなくらい
嘔吐いた後、

グラつく身体に気合いを入れ直して
歌番組の収録をなんとか全てこなした。





途中途中の記憶が怪しいのが
本当に不甲斐ないけれど、
いつも通りに踊れた…はずだ。









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「はあ…っ、はあ…」






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収録後、俺と数名のスタッフさんとで
同局の別番組のための打合せを終えた。



こんな状態で、失礼はなかっただろうか。
…少し、不安になる。






やたらと力の入らない指先のせいで
台本を落としてしまわないように、


ぐるぐると回る視界のせいで
壁や人とぶつかってしまわないように、



神経を集中させて楽屋へと向かった。





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打合せが少し長引いたから
他のメンバーはもう帰ってるはずだし

少しだけ楽屋で身体を休めてから帰るか…






…もう少し、もう少しだ。






しっかり歩けよ、俺。









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ガチャ…、パタン







死ぬかと思う程長い道のりを経て
辿り着いた楽屋のドアを開けて





誰もいないことを確認できた、瞬間






「…っ」







緊張の糸がプツンと切れた。







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一瞬、意識がぶっ飛んでいたらしい。








頭と身体に衝撃と鈍痛が走ったところで
はじめて、倒れたんだと気付いた。









じわじわ、
冷たい床から身体に冷気が伝わってきて
とてつもない悪寒に襲われる。




キリキリ痛む胃が
さらに悲鳴をあげる。




息を吸えば吸う程
吐くものもないのに吐き気が増長されて
浅い呼吸を繰り返すことしかできない。






「…っ、ぅ゛…」







声も出ねえし…


も、動けねえ…




…っ






冷たい床は
容赦なく俺の体力を奪っていく。





このままここに居続けたら
どうなってしまうのか…だなんて、




ガラにもなく
…恐怖に押し潰されそうになった。







「…っ、っ……」








はは…、なさけねー…






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倒れた瞬間にぐしゃぐしゃになった台本。




それが何故か、

今後の自分達の行く末を暗示してるみたいな
変な錯覚に陥った。





頑張っても頑張っても
結局はこの台本みたいに、俺達も…





…っ




…ばかやろ、

まじで、ガラにもねーことばっか
考えてんな、俺…






俺が…守って……やらなきゃ…




……はやく…立ち、上がって…







想いとは裏腹に、言うことの聞かない身体。





やりきれない思いに
ぎゅうっと拳を握りしめた。



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