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『……相手が好きな人じゃなくても、ってことだよね?』


「まぁ、好きな人なら尚更いいだろうけどさ。する?」


『しない』


「なんだよ、つまんねぇ」





そっか、好きじゃなくてもキスってしたくなるんだ。


じゃあ、松倉さんはやっぱりただ酔ってて、私が寝ていると思ったからキスしただけ?


でも昨夜の時、私も恐らく松倉さんも酔いが覚めていたし。


今考えたら松倉さんが、そういう流れに慣れているとしか思えなくて。


そりゃあ私だって海人とそういう事してきたけど、恋人じゃないなら話は別だと思っていて


でも、松倉さんは慣れていて。


これが男性と女性の考え方の違いなのか、それとも松倉さん自身の慣れなのか、分からなくて。




そんなことを考えているうちに、あの時自分が松倉さんの唇に触れたくなったことを思い出す。


……私も一緒?したくなったからしたの?




あの時、何故か松倉さんの唇に吸い寄せられるように触れたくなって


流されるままにキスをして


もっと、なんてオネダリまでして


付き合っていないのにそんなことするなんて、今までした事がなくて。


……自分の気持ちが分からない。






「あのさ」


『ん?』


「お前のことまじで好きだから」


『……そう』





急にそんな真剣な顔しないでよ。


ふわふわとした感覚が引いていって、酔いが覚めそう。





「誰にキスされたのか知らないけど、Aがそいつのこと別に好きじゃないんだったら気にすることなくね?」


『え?』


「別に好きじゃない人がキスしてきても、お前が悩むことじゃん。なんかキスされたなーってくらいでさ」


『……』


「女の子だったら、"この男サイテー!"みたいな感じになるんじゃないの?」





そっか。


たしかに、そうかもしれない。


私が好きじゃないなら、最低だと思って終わる。


じゃあ、このモヤモヤした気持ちは何?


私は、何が引っかかっているの?





「なに、そいつのこと好きなの?」


『……わかんない』


「はぁー、やっぱキスしてんじゃん」


『し、してない』


「もう嘘ついても遅いよ」


『元太嫌い』


「キスしてみたら好きになるかもよ?」


『ならない』





私が断ると、元太は私の顎に手を添えてグッと自分の方に顔の向きを変えられた。





「物は試しって言うじゃん、どう?」





熱を帯びた目、近づいてくる顔。


ここではしないって言ったのに、そんな顔しないでよ。

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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時

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