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注文を終えて、スマホでさっき見てきた物件を眺める。






「あ、カイト!いらっしゃい!」





甘い顔立ちの店員さんが元気よく挨拶をしている。


こんな近所にカイトって沢山居るんだ。


なんて呑気に思っていた矢先





「しめ、お疲れ。」





聞こえてきたのは、元カレの海人の声だった。




「今カウンター席だけ?」


「そうなの。いい?」


「いいよ。ピザトーストとブラックください。あ、ミルク多めでほしい」


「もうそれカフェオレ頼んだ方がよくない?ていうかほぼコーヒー牛乳じゃん」


「いや、これが美味いんだって」




……そういえば前、海人が"バイト仲間だったやつが働いてる喫茶店のコーヒーは、コーヒー牛乳にしたら美味いんだよ"なんて話してたっけ。


ここの事だったんだ。







そう考えている間にもカウンター席に歩いてくる足音が聞こえる。




……バレたくない。


"よいしょ"と腰を下ろしたのは、私がいる席と逆サイドの端の席。


海人の方を見ないようにする。


髪型は変えたし、服は新調したから、顔さえバレなきゃ大丈夫。


きっと大丈夫。





「はい、カフェオレお待たせしました」





目の前に差し出してきたのは松倉さんだった。





『……あ』


「お疲れ。髪型変わってたからビックリした。一瞬誰か分かんなかったよ」





"可愛いね、似合ってる"と笑いかけてくる。




「どうしたの?何かあった?」


『いや……』





海人にバレないか不安になりながら、あまり声を出さないようにしていると、挙動不審に見えたみたい。





「わざわざ寄ってもらってごめんね、俺が合鍵作っておけばよかったんだけど」


『いえ、大丈夫です』


「Aちゃんこの後真っ直ぐ帰る?早くあがらせてもらえることになったから、どうせなら一緒に帰ろうよ」


『えっと……』





どうしようか悩んでいると





「……A?」





海人にバレた。





「A、無視すんなよ」


『……なに』





ぽかんとしている松倉さんから海人に視線をズラすと、まだ数日しか経っていないのに久しぶりに目が合ったように感じた。

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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時

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