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テーブルに"鍵はドアポストに入れます"っていうメモ書きが置いてあった。
確認すると、そこにはちゃんと鍵が入っていた。
とりあえず、昨日予約した内見に行かないと。
「3軒見ていただきましたが、いかがでしょうか?」
不動産屋の方と相談して内見したは言いものの、どこも物足りない。
『どれも素敵だったんですけど……』
「決めかねてしまう原因が何かございますか?」
『夕日が綺麗に見えそうなところが良くて』
「夕日、ですか」
『ごめんなさい、無理言ってしまって』
「支店に戻り次第確認致しますので、明日以降またお時間いただけますか?」
『はい。よろしくお願いします』
松倉さんの部屋で見たあの綺麗な景色が、自分でも思っていた以上に気に入ったみたい。
不動産屋の方と現地でお別れして、予約していた美容院に向かう。
海人の好みに合わせて切っていた髪を見るのが辛いから、エクステをつけてもらった。
久々にロングになって、ご機嫌気分で喫茶店に向かう。
「いらっしゃいませ」
喫茶店で出迎えてくれたのは、たまに出勤している甘い顔立ちの男性の店員さんだった。
3連休の中日だからか、やっぱり今日もお店は混んでいた。
今日はあの常連さんはいなくて、カウンター席だけが空いている。
「もしかしてまちゅですか?」
『まちゅ……?』
「あ、マスター!マスターのこと!」
松倉さん、まちゅって呼ばれてるんだ。
なんだか可愛いあだ名。
『はい。松倉さんいらっしゃいますか?』
「今ちょっと裏で仕事してるんですけど、呼んできましょうか?」
『それなら大丈夫です。何か飲んで待ってます』
「かしこまりました。ご注文お決まりになりましたらお伺いします」
今日は疲れたから甘めのカフェオレにしようかな。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時