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『やっぱりあとふたつ、お願いしたいです』
「ん、なんなりとどうぞ」
『頭撫でてほしいです』
「あとひとつは？」
『……ギュッてして？』
「ん、こっちおいで」
元々ふたり寝るには狭いシングルベッド。
少し近づくと、抱き寄せて頭を撫でてくれる体温。
家よりも居心地がいい喫茶店、そのマスター。
なのに、ただそれだけなのに
沢山のことを求めてしまうのはどうして？
松倉さんの腕の中で胸に頭を擦り寄せて、顔を見られないようにする。
『……私、同棲してた彼氏と別れたんです』
「そっか」
『それで、家を飛び出して。でも田舎から出てきた私には行き場がなくて。唯一頼れそうな同期には何故か告白されちゃって、そんな状況じゃ頼れなくて』
「うん」
『だから、松倉さんが神様に見えます』
「神様？」
『はい。神様に頭撫でられてるなんて、幸せ』
「これだけで幸せを与えられるならいくらでもやるよ」
『……もっと』
「寝るまでやっててあげるから、安心して」
頭を撫でるリズムと、落ち着く体温。
体調の悪い私が眠るには十分な状況で、直ぐに眠気が襲って頭が働かなくなる。
ふわふわして、夢の中で話しているみたい。
『松倉さんの手、海人より大きい』
「海人？」
『海人より、優しくて温かい』
「良い感じ？」
『ふふ、好きです』
「良かった」
ふわふわした空間で、そのまま意識を飛ばした。
「……おやすみ」
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
