22話 ページ26
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「行くよ」
サクヤの短い言葉で二人は駆け出す。場所は前に一度行ったことがある。料金は前以て全額貰っているので早く終わりそうだ。
サクヤとルナ、どちらも気配を完全に消しているが、二人がぶつかる事はない。なぜなら二人は、魔力で相手の場所を把握しているからだ。
魔力は指紋と同じく、一人一人違う、同じ水属性でも魔力の密度が微かに違うのだ。二人はそれを使い、相手の場所を把握している。
勿論、この技が出来るものは数少ない。
夜とはいえ、ここは屋台が並ぶ街だ。近くのギルドでは依頼が終わった者達が集まり、酒を飲んでいる。こんなところの道のど真ん中で、全力疾走していると気配を消していても、魔力に敏感な者には気付かれるだろう。
だからあえて屋根の上で音をたてずに走った。
例の場所は廃墟と化した大きな二階建てのコンクリートの建物だった。壁に張り付いた蔓がこの場の雰囲気を一層暗くさせる。
目的地に着くと、消していた気配を戻す。それに習ってルナ、もとい【殺戮の黒猫】も戻した。張っていた音封じの結界を破る。ここからはいつも通りに堂々と巨大な扉を蹴破った。
中に居たのは、魔力を探すと男女合わせて92人。
先ず、扉の内側にいた難いのいい男4人を声を出す暇も与えずに首を苅った。
人を殺したおかげで、サクヤの中の悪魔の血が騒ぐ。
──殺し足りない、もっと、もっと、俺様に血を……!─────
それからの記憶は一切ない。気が付いたら血溜まりの中に立っていた。からだ全体が生暖かいモノで濡れている。手の平を見ると赤黒く染まっていた。
───まただ、またこの【チカラ】を使いこなせなかった。6年経った今でもたまにこの【チカラ】
に振り回されることがある。このままだと、目的を達成できなくなるっ!!
未だに制御出来ない己の力に腹が立つ。
「くそっ!」
怒りのあまり、既に原型を留めていない肉塊に勢いよく【宵闇】を突き刺した。すると、掌に肉と骨が裂ける感覚が直に伝わってくる。
それで我に返ったサクヤはちらりと横目でルナをみた。
隣にいたルナの表情はどこか悲しそうだった。だがその顔は一瞬で元に戻り、いつもの顔に戻っていた。
「……サクヤ様、帰りましょう?」
そう人獣の彼女は、優しく母親のように語りかけた。
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シャル♪黒猫大好き人間(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます!!私もこの表紙結構気に入ってるんです(笑)更新がんばりますのでこれからもよろしくお願いします(*`・ω-)ノ (2020年2月28日 23時) (レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 表紙の蝶とか彼岸花とか凄く好きです!物語も、とても面白いです!更新頑張って下さい! (2020年2月28日 21時) (レス) id: d935f18f17 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな♪(プロフ) - 月の芋さん» ひ、久しぶりのコメントっ……!(T-T)ありがとうございます!更新は遅い方ですが、これからもよろしくお願いします!(^∇^) (2019年8月29日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
月の芋 - あぁ!!なんて面白い作品なんだぁぁ!あ、すみません(._. 面白くて好きです!応援してます。続き楽しみにしてます!(`・∀・´ (2019年8月29日 20時) (レス) id: de5541b525 (このIDを非表示/違反報告)
如月唯奈(プロフ) - 今日から新しい時代が始まりました!今時代(?)こそ良いことが起こりますように!そして、この小説で一位をとってみたいなんて、贅沢を言ってみる(笑)これからもよろしくお願いします! (2019年5月1日 3時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャル(如月唯奈) | 作成日時:2018年10月24日 1時