7話 ページ11
.
自分よりも少し薄い紫色のガラスのうような瞳を見開き、仰向けに倒れている。斬られた傷口からは滝のように赤黒い水が流れ出ていた。
そして、その隣にはかつて自分を愛してくれた【母親】。いくら揺すぶってみても、ぴくりとも動かない冷たく石のようになった、身体。
そして、辺り一辺、血の海だった。
───────────────────────
「……ヤ……サクヤ……サクヤ君!」
はっと、我に帰り振り向く。そこには、ソフィアが心配そうな顔をしていた。
「大丈夫ですか?凄く青い顔をしていたから……」
「ありがとう、でももう大丈夫だから。」
と、作り笑いを浮かべる。いつも誰かと話すときは作り笑いが一番良い。
妹が死んで6年、かなり時間が経った筈なのに未だにあの日のことを思い出すと息苦しくなる。
ソフィアは「次は数学ですよ?」と、言い残し教室を出ていった。どうやらすでに授業は終わっていたらしい。まだ何人かはノートをとっているが、殆どの生徒は片付けを始めている。
「……痛っ!」
教科書を持つと、鋭い痛みを感じた。手のひらを見ると爪の跡がくっきりと見え、血が滲んでいる。過去の事を思い出しているときに、無意識に握りしめていたらしい。
─────────5年前────────
また、あの時の発作が起きてしまった。このままだったら【目的】が出来ない。ギチリと歯が音を鳴らし、鉄臭い味が口に拡がる。
───もっと、強くなりたい。今の自分ではアイツを殺すことは出来ない。もっと、もっと強くならなくては───
そう、思った時だった。自分の真下に直径2m程の血色の魔方陣が拡がる。体を動かそうにも、石のように指一本も動かすことが出来ないのだ。その魔方陣は普通とは違っていた。
通常ならば、【カタル語】と呼ばれる、この世界の共通語が刻まれるのだが、これは【カタル語】ではない別の文字が刻まれていた。
その瞬間、目の前が光に包まれサクヤは黒い空間に立っていた。
《お前、強くなりたいのか?》
突然後ろからしゃがれた声が聴こえ反射的に振り返った。
振り返った先にいたモノは、蝙蝠のような翼に竜の鱗が生えたひび割れた皮膚。口からは鋭い牙が生え、ちろりと細い舌が時折出ている。手は人のような形だが、先には鋭いかき爪。尻尾は矢のようには鋭い。
.
22人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャル♪黒猫大好き人間(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます!!私もこの表紙結構気に入ってるんです(笑)更新がんばりますのでこれからもよろしくお願いします(*`・ω-)ノ (2020年2月28日 23時) (レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 表紙の蝶とか彼岸花とか凄く好きです!物語も、とても面白いです!更新頑張って下さい! (2020年2月28日 21時) (レス) id: d935f18f17 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな♪(プロフ) - 月の芋さん» ひ、久しぶりのコメントっ……!(T-T)ありがとうございます!更新は遅い方ですが、これからもよろしくお願いします!(^∇^) (2019年8月29日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
月の芋 - あぁ!!なんて面白い作品なんだぁぁ!あ、すみません(._. 面白くて好きです!応援してます。続き楽しみにしてます!(`・∀・´ (2019年8月29日 20時) (レス) id: de5541b525 (このIDを非表示/違反報告)
如月唯奈(プロフ) - 今日から新しい時代が始まりました!今時代(?)こそ良いことが起こりますように!そして、この小説で一位をとってみたいなんて、贅沢を言ってみる(笑)これからもよろしくお願いします! (2019年5月1日 3時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シャル(如月唯奈) | 作成日時:2018年10月24日 1時