EP.15_1 ページ6
少しばかり時が流れ、夏が来た。寝起き早々朝日に目を細め、ちょっと窓を開けて外の空気を吸ってみたりしちゃって。熱気と共に室内へ舞い込む風を目で追うようにして視線を滑らせる。その視線の先には、久々の休日だということで無防備な姿で惰眠を貪るハヤトの姿。陽の光を反射して金色に輝くココア色の髪を見て笑う。眼鏡を着けていない今は細かいところまで分からないけれど、その安らかな寝姿はどこかいつもより柔らかい雰囲気を纏っているように見えた。
「おきろー」
窓枠にもたれかかりながら一つ声を掛けても起きる気配はない。手を伸ばして頬に触れてそっと撫でた。すべすべ。肌荒れとは程遠そうな白い肌に腹が立たんでもないが、ゆったりとした寝息を聞いていればそんな気持ちも薄れていってしまう。手を下にやって胸元にあった手に触れれば、薄手の毛布に包まれて温まった手の熱がじんわり伝わってきて。そして、そのまま緩く手を握られてしまって。本人の意識が介在しない所で無意識に行われたその子供のような行動に、例え夏だろうと何だろうと手を振り払うことはできなかった。
「……あっつ」
そう溢した時、言葉尻に笑いが含まれていたのはわざわざ言うまでもないだろう。
◆ ◆ ◆
「恋人らしいことしたことなくないですか」
「……はぁ」
クーラーの風でふわふわと揺れる寝癖を見つめる。ハヤトは元が癖毛だから寝癖がつくとすぐには直らなさそうだ。つまり軽く梳かせばすぐ綺麗になる髪の毛ドストレート民のワイ勝訴ってことでええか? よくねえよ。……恋人が出来ても脳内で一人漫才をするのは変わらないらしい。もうこの癖直んねえな、対戦ありがとうございました。
「恋人らしいことって何よ? してるでしょ大分、昨日だって散々人のこと食い散らかしてくれちゃったくせに」
「うっ、いやまあそれは……! ……そうなんですけど。でもなんかもっとこう、あるじゃないですか色々! ほら、ベタな例を出すなら夜景の見えるレストランで〜とか」
「あぁそういうことね、確かにそれはやってないわ。でもやりたいか?」
「一回ぐらいやっときたくないです?」
「んまあ……」
恋人らしいこと、ねえ。確かに少女漫画や乙女ゲームにありそうなベタなやつはやったことがない。デートは基本お家デート、夜になんとなくそういう雰囲気になることはあれど日中何かあるわけでもなし。
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毒猫ちゃん - 好み…ドストライク…最高です… (9月14日 4時) (レス) @page22 id: 7d4f953b5d (このIDを非表示/違反報告)
如月1123(プロフ) - 零人さん» わー、いつもコメントありがとうございます!!命救いました() 旅行系のお話いいですよね……。応援して頂けてめちゃめちゃ嬉しいです、無理なく頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!! (2022年11月7日 7時) (レス) id: 6bb8b6637d (このIDを非表示/違反報告)
零人(プロフ) - 更新ありがとうございます。命が一つ救われました()温泉旅行、、、、社長と、、、、、、。更新は無理せず頑張ってください。応援してます!(←こいつもめっちゃサボってます) (2022年11月6日 8時) (レス) @page14 id: 94faa0a05d (このIDを非表示/違反報告)
如月1123(プロフ) - はわわさん» コメントありがとうございます、続編まで来ちゃいましたよ…!今後とも皆様に楽しんで頂けるような、かつ作者の趣味全開の物語を頑張って紡いでいければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します!! (2022年9月26日 5時) (レス) id: 316392659a (このIDを非表示/違反報告)
如月1123(プロフ) - 零人さん» コメントありがとうございます、まさかこちらの方でもコメントして頂けるとは…!恋人になって今後どのような展開になっていくのか、温かい目で見守って頂けると幸いです!どうぞよろしくお願い致します!! (2022年9月26日 5時) (レス) id: 316392659a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月1123 | 作成日時:2022年9月25日 16時