M 気付けばライラックに染まっていた ページ6
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俺が生まれたときからいるのはここ、あかつきアーケード。
近隣の市には大型ショッピングセンターがあるし、少子高齢化もここでは珍しくない話だし、せっかくいる若者も都会に流出して、残念ながらシャッターが下りっぱなしの店舗もある。
それでも俺はこのあかつきアーケードで本屋『星雲書房』を営んでいる。
こういう街の本屋は苦境に立たされている。
ネットで頼んだ方が楽なのは確かだし、種類が豊富な大型の本屋に行きたい気持ちも分かる。
本は幅を取るから電子書籍で読むのもありだと思う。
それでも俺は紙の本が好きだから親からこの星雲書房を継いで、皆様のおかげで潰さないまま今に至っている。
星雲書房は祖父の代からある。
最初は貸本屋だったらしいが、途中から本屋に切り換えたという。
祖父は天体が好きで、この店の名前もそういったことから名づけられた。
星雲書房を継いだのは3年前。
その前は出版社に勤めてた。
よく考えたら本が出来上がる流れをあまり知らなかったから。
それが今役に立ってるかは分からないけど。
ちなみに親父は御友人たちと一緒に神保町で古書店をやっている。
ここは任せたと言われているのでわりと自由にやらせてもらってる。
だから自分が店主になったとき、自分の色を前面に出すことが出来た。
俺は漫画・アニメ・ゲームが好きだ。
出版社にいるときもそれに関する本を担当していた。
だったらと漫画・アニメ関連のスペースを広くした。
並んでる本たちは完全に俺好み。
すると来店してくれた人がSNSでここはガチだと書いたらしく、それがクチコミで広がって同じような趣味を持つ人が来店するようになった。
それが励みになっている。
「宮っち」
お客さんのピークが終わって本たちを整理していたら玉こと玉森裕太がやって来た。
玉は俺の幼馴染であかつきアーケードで花屋をやっている。
「玉。玉から来てくれるなんて珍しいね」
「えっそんなことないんじゃない?」
「あるある。いつも俺から」
玉とは波長が合って一番の親友だと思う。
よく二人で一緒にいるからか近所のおばちゃんたちに温かい目でよく見られてる。
そんな玉は最近彼女が出来た。
村田朋枝さんという可愛らしい方だ。
そして何より玉が彼女にベタ惚れでお似合いカップルだ。
彼女が出来たから玉がつれなくなったというのが最近の決まり文句。
あくまでネタだけどね。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年11月23日 14時