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「……あっ」
絵具がいつの間にかTシャツに飛んでいたのに気づく。
Aちゃんも来ないし、友達たちも来ないとそこそこ広いアトリエで1人作業をする。
1人だから誰とも喋んないし独り言もそんなにしないからひっそりとなったアトリエは集中できるけどどこか寂しい。
あれから描き進めてはいるけど、どこかスッキリしないまま日々を過ごしている。
果たして今赤く塗られているキャンバスが正解なのかはっきりとしない。
「千賀」
ひっそりとしたアトリエに響くのは幼馴染の声。
「ニカ」
「はい、出前」
「ありがとう」
ニカが持ってきてくれたのはたまごサンド。
ニカの店の、楓さんが作ったたまごサンドは本当に美味しい。
「これは完成に向かってるの?」
ニカはキャンバスを指差した。
「多分」
「納得してないわけね。それにあの子もいないし」
多分ずっと一緒にいるニカには全部バレてるんだろうなと感じる。
「こないだ楓さんが言ってたの、千賀も覚えてると思うんだけど、千賀もずれてるな、伴さんに対して」
楓さんが言っていたのは、我々男性陣は女性に優しいけれども、微妙に方向性がずれてるといったこと。
「伴さんの方向性は分からないけど、千賀の方向性はずれてるよな」
「だね」
でもどうやって正しい方向性に向かえばいいのか、それが何なのか、模索するためにキャンバスに向かってるけどはっきりとしない。
「俺が楓さんと付き合えるようになったのは偶然の産物だったけど、それがなかったら平行線のままだったろうな」
「あのときのニカかっこよかったけどね。俺の女って」
「だからそれやめて」
楓さんの元彼が蒼天に乗り込んできたとき、ニカは見事にそいつを追い出した。
俺の女を馬鹿にしたらただじゃおかないみたいなことを言ってて、そのときのニカはかっこよかった。
あのときのニカみたいに決められたらいいんだけど。
「お前のその感じ、あそこのオブジェ作ってるときと似てる」
「あのときもものすごい時間かけたな」
責任重大なミッションでものすごく悩んだ。
そのときはAちゃんはいなかったから、支えてくれたのはニカを始め友達たちだった。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年11月23日 14時