恋は街中に降り注いでいる２ (ページ11)

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今日の営業を終えて、横尾渉の『夕月夜食堂』を訪れると見知った人がいたので彼の隣に座る。

「珍しくシケた顔してんじゃん」

「そんなに？」

「そうだよ。いつもなら陽気にキタミツって呼ぶ」

キタミツこと北山宏光は服屋の店主。
俺が本屋を継いだ後ぐらいにあかつきアーケードにやって来た。
それ以来の友達。
横尾さんもキタミツ同様3年前にここに来て『夕月夜食堂』をオープンさせた。

「まあ大体は玉から聞いたけど」

横尾さんがこちらに来た。
横のキタミツを見れば野菜炒め定食のようだった。

「今日は横尾さんの日ね」

「そういうことです」

荻野恵麻さんもこちらに顔を出した。
彼女は横尾さんの彼女。
最近夕月夜食堂はシステムが変わって、横尾さんと荻野さんが交互でメインシェフになっている。

「宮田さん何になさいますか？」

「キタミツと同じので」

「はい、分かりました」

なんとなく厨房を眺めてしまう。
夕月夜食堂の雰囲気が変わったなあと思う。

「お前がシケた顔してると調子出ないな」

「俺だってそんな日はあるよ」

キタミツは野菜炒めを口に入れて。

「それで決着はついたの？」

「うーん……」

ずっと頭の中をぐるぐる回ってる。
この気持ちは何なのか。
答えを出すことが怖いことには気付いてる。

「勢司さんに言われたんだよね。ここの男性陣は微妙に方向性がずれてるときがあるって。本当にそうなんだよね」

「俺はどうなんだろう」

「ずれてるときあるんじゃない？」

「かもな」

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