Ki 紅の輝きは一番近くにある ページ33
・
俺が店を構えてるのが、ここ、あかつきアーケード。
2駅向こうには大型ショッピングセンターが進出してるし、後継者不足って話は珍しくないし、少子高齢化、若者の人口流出なども叫ばれて久しい。
シャッターが下りっぱなしの店舗だってある。
それでも俺はここを好きになって洋服屋『Sunlight』を営んでいる。
俺は専門学校卒業後、とあるアパレルブランドで働いていた。
将来は自分の店を持つという野望を持ちながら、様々な店で店長をやったり、デザイン側に回ったりした。
そして30歳になったのを機に独立した。
店を出す場所はとても迷った。
だけどあかつきアーケードにしたのはアーケード街の雰囲気が良かったから。
不動産屋に今の店の場所を紹介してもらったときは正直こんなところで店をやっていけるのかという心配があった。
知り合いのいない土地だし、あかつきアーケードは歴史のある場所だし、新参者が受け入れてもらえるのかと悩んでいると。
「こんにちは」
俺とそこまで年が変わらなさそうな男が挨拶してきた。
「こんにちは。宮田さん」
不動産屋と宮田と呼ばれた男は顔見知りのようだった。
これが宮田俊哉との出会いだった。
「空き店舗紹介されてるんですね」
「はい」
「どういった店を開きたいんですか?」
宮田が俺に話を振った。
「服屋です」
「へえ。お洒落な感じになりそうですね。あっ僕はすぐそこの本屋で店主をやってます」
「店を継がれたんですか?」
俺よりも年下な気がするのでそこに繋がった。
「はい。ここは確かにご多分に漏れずシャッターが下りてるところもありますし、ご年配の方がまだまだ頑張ってますけど、僕のように継ぐ若いのもいますし、新しい方大歓迎です」
「……考えてみます」
その後あかつきアーケードに1時間滞在して観察した。
シャッターが下りてるところもある。
だけど完全に寂れちゃいない。
残された人たちの中の活気を感じた。
だからここでやっていけると思った。
まああとは宮田の柔らかさも加点して。
よって俺はSunlightをオープンさせた。
もちろん不安はあったけど、皆さん寛容で懸念していたことは杞憂だった。
宮田は俺が来たことを喜んでくれて、花屋の玉森裕太、後に喫茶店を継ぐ二階堂高嗣、アーティストの千賀健永を紹介してくれた。
・
67人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年11月23日 14時